IoT時代に向けて日本企業が克服すべき課題は「損して得を取る」:ET2014 基調講演リポート(3/4 ページ)
「Embedded Technology 2014/組込み総合技術展」の基調講演に、パナソニック 全社CTO室 理事の梶本一夫氏が登壇。同氏はパナソニックのIoTに関する取り組みやIoT時代に求められるエンジニア像、日本企業の課題について語った。
End to Endの視野を
梶本氏はIoTの時代に求められるエンジニア像について、「組み込みの世界だけでなくEnd to Endの視野を持つことが重要。ユーザーにモノだけでなくサービスとして提供する、“コトづくり”の意識を持って開発を行う必要がある。また、IoTサービスの場合、クラウド側と端末側で情報を処理させる割合をバランス良く設計したり、さまざまなコンプライアンスへの配慮も求められる」と語る。
梶本氏はエンジニアに対してこうした高度なスキルが求められつつある中、日本ではソフトウェアエンジニアの立場が低い傾向にあると主張する。「米国ではアーキテクチャを構築して博士号を取得できるが、日本では難しい。海外と比較して日本ではプログラムを書くということが一段低く見られており、報酬も非常に低い。ソフトウェアエンジニアは“きつい・給料が安い・帰れない”職業と称されており、大学の情報系分野の人気も低迷してしまっている」と説明する。
その理由について同氏は「日本では無から有を作ることより、『以前より性能がこれくらい向上した』、『工数をこれくらい減らせた』というような、過去との差を客観的に提示できるものが評価される傾向にある。過去との比較ができないアーキテクチャの設計・実装はリスペクトされないという風土があるのではないか」と説明する。
さらに梶本氏は、日本国内のこうした状況が、優秀なエンジニアが日本企業ではなく外資系企業に流れてしまうという問題や、企業が求める人材と大学における研究価値のギャップにつながっていると指摘した。
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