東京都が2020年に自動運転バス「ART」を導入へ、“交通弱者”に優しく:安全システム(2/2 ページ)
総合科学技術・イノベーション会議が主導する戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の自動走行(自動運転)システムの研究開発プログラム「SIP-adus」は、東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年に向け、東京都内に次世代公共交通システム「ART」を導入する方針を示した。
日本国民の4分の1が“交通弱者”!?
本格的な活動はこれからのSIP-adusだが、質疑応答の中で今後の方針が幾つか語られた。
まず、SIP-adusが開発した自動運転システムを搭載する車両については、東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年に向け、東京都内に次世代公共交通システム「ART」を導入する方針が示された。
ARTは、自動運転システムとITS(高度道路交通システム)、ICTなどを活用した自動運転バスだ。交通状況によって発生する待ち時間を最小にする運行システムや、高齢者や身体障害者が停留所とバスの間を乗降する際の妨げにならないような停留所の横づけを自動で行う技術、スムースな加減速による乗客の車内転倒防止など「自動運転技術の実用導入を象徴するものになる」(渡邊氏)という。
また、ユニバーサルサービス導入の前提になる“交通弱者”についての説明も行われた。SIP-adusでは、日本国民のうち、障害者手帳を持つ654万7000人だけでなく、障害者手帳を持たない3歳以下の子どもや75歳以上の高齢者などの2839万7000人を含めた3494万4000人を“交通弱者”と想定している。これは、日本の総人口の27%に当たる。「こういった交通弱者にとって、ARTのような自動運転バスがユニバーサルサービスになり得る」(SIP-adus)という。
この他、高齢者が自動車を運転している際の交通事故が増加している傾向についても説明があり、「自動運転技術が進化すれば、こういった交通事故を減らせる可能性が高い」(SIP-adus)という期待が示された。
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