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スパコン性能、2020年以降は伸びずに頭打ち!? ――これから何をするべきかCAEイベントリポート(2/2 ページ)

スパコンが登場してから40年間、計算能力は順調に「10年に1000倍」の速度で向上し続けてきた。だがこの伸びは2020年には近い将来に止まるという。その時CFDでは何ができるだろうか。東京大学 生産技術研究所の加藤千幸氏が講演した。

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LESで何ができるのか

 次に、加藤氏が取り組んでいるというLES(ラージエディシミュレーション)を紹介した。加藤氏は、信頼性の高いシミュレーションをしたいと思えば、やはり渦まで解かなければならないと考えており、それはRANS(レイノルズ平均モデル)では不可能という。

 乱流境界層においてどれだけ渦が小さいかを調べると、自動車レベルでは渦直径は数百μm、飛行機では数十μmとなる。

 LESが適用可能な工学分野は、自動車や船、風力タービンやファンなどだという。ポンプでは多少レイノルズ数を落とすなどが必要になり、飛行機は渦が小さいため解けないということだ。

 LESにおいて重要な要素は格子生成であると加藤氏は強調した。なぜなら、LESは格子を決定した瞬間に、精度が決まるからだ。さらにパラメータ探索は膨大な量になるため、いかに良い自動格子生成が可能かが重要になるという。

 格子の適切なタイプとして、ブロック構造格子、四面体格子結合の階層型格子(Layer grid combined with tetrahedral grid)、全領域四面体格子(All tetrahedral grid)、直交格子の4つが挙げられる。例えば、「ブロック構造格子は圧倒的に精度が高いが、作るのが大変」など、格子それぞれに特徴がある。どんなやり方でも解像度があれば解けるといい、全てで乱流の境界層が解けることは確認している。問題は、格子の作りやすさと、計算する時のコストパフォーマンスということになる。自動車の場合、周囲はブロック構造格子や階層型格子、床下やエンジンルームの中は境界層は全く関係ないので全領域四面体格子や直交格子を使う、といったふうにすればよい。こういったコンビネーションがいかに簡単にできるかが、実用化のカギを握ることになるだろうと加藤氏は述べた。

 加藤氏は自動車周りの流れの解析例を示し、必要な最小スケールの渦を解けば実験と計算結果が一致することを示した。剥離点の直後に現れる3次元構造や遷移などを捉えていた。これは実験の置き換えや現象理解に使える。

構造解析モデルを基に車内音を予測

 また車内音の予測例も示した。

 車内音はクレイモデルでは絶対に確認できないため、試作車両を作らなければいけない。1台当たり1〜2千万円掛かるため、シミュレーションで予測したい項目の1つだ。自動車メーカーが持つ構造解析モデルを基に、格子を少し改良して実験とも合うことが確認されたという。

 加藤氏が講演で紹介した解析は、全て100PFLOPSで計算できるという。また最適化の方向については、40万ケースにもなる同時計算をどのような手法で行うのが一番よいのかはまだ分かっていないという。最適な格子数や壁のモデル化方法なども分かっていない。この辺りをきちんと見極めることが、最適化を実用化する際に、クリアにしなければならないポイントになるだろうということだ。

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