選べるクラウドサービスを提供――CAEは「現象を解く」の一歩先へ:CAE最前線(1/3 ページ)
CAEの世界でクラウド化が加速しているが、その利用にはまだ高いハードルがある。そんな中、各種スパコンを目的に応じて選択でき、チューニング作業が必要なく、スパコンの存在を意識せずに解析の業務に集中できるクラウドサービスが注目を集めている。
解析の規模がますます大きくなる中、CAEにおけるスパコンの活用は着々と増えている。だがスパコンを利用するためには、通常スパコンやネットワークなどの専門知識が欠かせない。そもそもスパコンの操作は、CUI環境でコマンドを打ち込む昔ながらの世界だ。マウス無しのタイプインが常識で、OSはLinuxであるなど利用のハードルは高い。
ヴァイナスはCCNV(cloud computing navigation system)という、スパコンを利用した解析をより便利に行うことができるシステムを提供している。社内のHPCもしくは京やFOCUSといったスパコンを利用でき、クラウドの専門知識がなくてもスパコンを利用したCAEが可能になるという。
CCNVのサービスは、「スパコン上に、普段使い慣れたWindowsのOSを持ってきたようなもの」だとヴァイナス 代表取締役社長の藤川泰彦氏は説明する。このサービスの中では、例えるとスパコンのFOCUSがハードディスク内のCドライブ、IBM SoftLayerがDドライブとなる。ユーザーはスパコンにリモート接続して解析を行うが、スパコンやネットワークなどの知識は必要なく、手元のワークステーションで作業するように解析できるという。
CCNVは「スパコン用の知識やチューニングが必要ない」「クラウドとして利用するHPCを選ぶことができる」という特徴の他にも、ファイル転送の高速性、タブレットPCの活用、また同社のVECAMSというサービスの利用により、オープンソースや自社開発のソルバの利用環境も整えられるといった特徴を持つ。
回線速度を確保
このシステムは、もともとヴァイナスの社内で使用するために作られたものが原型になっているという。顧客のCAEのスパコンでの利用環境を整えていく中で、スパコンごとの使用料金が分かる機能などを追加、最終的にシステム自体の提供に至った。
スパコンを利用しようとすると、まずLinuxの知識が必要になる。さらにスパコンごとのジョブ実行と管理、入力データの修正、ファイル転送、また利用料金が分かりにくい、アプリケーションの移植と管理、セキュリティ面などさまざまな問題が発生する。だがCCNVならこういった作業もサービス内に含まれる。
計算機ごとに解析内容の向き不向きがあり使用料金も変わるため、目的に応じた計算機を選択できるようになっている。選択肢についてはパブリッククラウドでは計算科学振興財団のFOCUS、理化学研究所の京などが利用可能である他、IBMが提供するIBM SoftLayer、アマゾンのAmazon Web Service上に構築したHPCシステムなども利用できる。また自社サーバとの切り替えも可能だ。
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