選べるクラウドサービスを提供――CAEは「現象を解く」の一歩先へ:CAE最前線(2/3 ページ)
CAEの世界でクラウド化が加速しているが、その利用にはまだ高いハードルがある。そんな中、各種スパコンを目的に応じて選択でき、チューニング作業が必要なく、スパコンの存在を意識せずに解析の業務に集中できるクラウドサービスが注目を集めている。
データ転送についても専用の設備を準備しているという。FOCUSなどでは多いときは何十社が実験を行うため回線が混み合う可能性がある。データ転送に2〜3週間かかってしまうため、そのままハードを抜いて新幹線で持って帰るという企業もいるという。そこでヴァイナスは京およびFOCUSのある神戸市ポートアイランドに、計算結果の高速ファイル出力センター(クラウドコンピューティング利用技術開発センター:C-CAT)を設置している。10GbpsでC-CATに転送されたファイルは、専用回線によってユーザーに転送される。TOKAIコミュニケーションズによる回線が2014年10月に開通予定だという。
非継続的な利用も可能
VECAMSはVINAS entrusted cloud application maintenance serviceの略で、クラウドコンピュータ環境へのアプリケーション移転サービスである。オープンソースやユーザー開発のアプリケーションについて、インストールと運用を請け負い、マルチHPCプラットフォームを利用したGUIであるCCNVを使うことで、複数のクラウドHPCサーバで簡単に計算を実行できる。またクラウドだと利用が断続的になったり、同じ解析ツールを複数のクラウドで利用したりすることもある。クラウドを利用するたびに解析に関するデータはスパコンから引き上げなければならないため、手間が掛かる。
そのためVECAMSでは、利用しないときに関連データをIBM SoftLayerに保管しておくことができるという。これはデータを「自宅のたんすでなく銀行の地下金庫に預けるようなもの」(藤川氏)で、セキュリティ面で信頼性が非常に高いということだ。オープンソースであればGPLというルールの元で運用するためカスタマイズ、コピーが自由だ。商業ソフトではこうはいかないという。
またCCNVの利用によって、関係者間での迅速な情報共有が可能になるという。解析結果はパソコンだけでなくタブレットでも利用できるようになる。
「解析結果のレビューは実験現場や会議室などさまざま。ワークステーションでの解析だと結果を簡単には持ち運べない。CCNVのサービスであれば結果のアニメーション閲覧が可能になるため、タブレットPCで結果を簡単に持ち出せるようになる」(藤川氏)。
あらかじめ閲覧できるメンバーをグループ化してShare機能を使えば簡単に共有もできる。セキュリティ面で気になるならシェアしないという選択も可能だという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.