ファブラボ鎌倉が教える21世紀の「読み・書き・そろばん」:モノづくり×ベンチャー インタビュー(3)(3/4 ページ)
「ほぼ、なんでも作る」を目的に、世界各国でさまざまな活動をおこなっているファブラボ。日本に最初に設立されたファブラボであるファブラボ鎌倉は、モノづくりの未来を見据えた人材育成に取り組んでいる。その背景について、ファブラボ鎌倉のプロダクトマネージャーを務める渡辺ゆうか氏を取材した。
子どもたちに教えられる人材の育成を
MONOist ファブラボ鎌倉では、ワークショップやイベントなどにも取り組んでいます。これらの活動について教えてください。
渡辺氏 大人向けのプロジェクトとして「FabAcademy」というものがあります。これは、世界中のファブラボをビデオ会議でつなぎ、デザインや工学といったジャンルを問わずさまざまなモノづくりを学ぶプログラムです。本当はこういったものを中学生くらいを対象にやっていきたいんです。そういった年代の子どもたちが時代を変えていくと思うので。でも、現時点ではまだ子どもたちに教えられる人材は少ないという状況です。
海外のファブラボでは、頻繁に子ども向けのプログラムを行っています。子ども向け、といってもやっている内容は大人とほぼ変わりません。子どもって、おもちゃで遊ぶようにどんどん覚えていくんですよ。日本でもこういう流れを作っていきたいんですが、どうしても教育というのは裕福でないと難しい面もあります。でも、時代は少しずつ変わっていくと思うので、準備は粛々と続けています。
最近の取り組みを紹介すると、JAXA(宇宙航空開発機構)が実際に打ち上げたロケットのパーツの一部を使って、Arduinoやタイヤなどを組み込んでリモコンで動くロボットを作るワークショップを行ったり、「10 STEPS for FabLife」という実践型のワークショップも開催しています。こうしたイベントには子どもたちも参加しているんですが、Rubyでコードが書ける小学生が登場したり、毎回発見や驚きがあってとても面白いです。
もちろん、大人も参加しています。プログラミングは分かるんだけど、電子回路についての知識はないというエンジニアの方が、「これまで隣の部署に頼んでいたのがどういうことだったのか分かった」というような感想もありました。こうした取り組みに加えて、2015年からはデジタルファブリケーションの講座をオンデマンド配信することも検討しています。
木材×テクノロジーを体験する「FUJIMOCK FES」
渡辺氏 「FUJIMOCK FES」という林業とテクノロジーを掛け合わせたイベントも開催しています。これは、森で木の伐採から、加工、仕上げなどを体験してもらい、その木材とさまざまな工作機械を利用してプロダクトを完成させるというイベントです。
参加者の中には、切り出した木材を乾燥させても割れないようにする方法を発見して、起業された方もいらっしゃいます。プロセッシングを利用するというエンジニアらしい発想で作られたサラダボウルや、「Rasberry Pi」のケースなど、さまざまなプロダクトが作られています。1つしか作らないのであれば、ちゃんとしたものを作りたい。今言われているパーソナルなモノづくりって、早く作れるけど仕上げが必要という段階ですよね。そういった面で、木材はとても良いものが作れるんです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.