ファブラボ鎌倉が教える21世紀の「読み・書き・そろばん」:モノづくり×ベンチャー インタビュー(3)(4/4 ページ)
「ほぼ、なんでも作る」を目的に、世界各国でさまざまな活動をおこなっているファブラボ。日本に最初に設立されたファブラボであるファブラボ鎌倉は、モノづくりの未来を見据えた人材育成に取り組んでいる。その背景について、ファブラボ鎌倉のプロダクトマネージャーを務める渡辺ゆうか氏を取材した。
ファブラボと地域がつながる
MONOist ファブラボ鎌倉と、その地元である鎌倉との間でどのような関係を構築していますか。
渡辺氏 鎌倉ではIT企業が中心となって街全体を盛り上げる「カマコンバレー」というプロジェクトの一環として、建長寺でハッカソンを行う「善ハック」というイベントや、鎌倉市限定のクラウドファンディングもあります。2014年から鎌倉市にオフィスがある面白法人カヤックさんのオフィスで、モノづくりのレクチャーを行ったりもしています。また、スタートアップ企業の支援を行っているOpen Network Labも鎌倉にあります。そういったところと連携して、何か新しいライフスタイルや暮らし方、働き方を提案していけたらと思っています。
世界的に見ても、生活者の創造性が高い街というのはすごく面白い。例えばスペインのバルセロナにあるファブラボが「Smart Citizen」というプロジェクトに取り組んでいます。これは、ファブラボで作られたセンサーを使って、バルセロナに住んでいる人たちが身の回りを環境を測定したり、街全体のエネルギー消費量の見える化を行うというものです。
また、太陽光を使って自家発電を行い、さらには分解や組み立てが可能な「Solar Fab House」という実験住宅も作られたりしています。ファブラボと地域やコミュニティーが結び付くことで、こうしたさまざまな活動が生まれるんですね。
ファブラボ鎌倉は、2014年で設立4年目を迎えます。これまでの3年間はかなり手探りをしながら運営を行ってきました。それを踏まえて、現時点でのファブラボ鎌倉の役割というのをまとめると「情報化や技術の普及によって創出される可能性や、新たな職業領域に適した学びの場を広げていく。そして、人材育成や研究開発とビジネスを促進させて、その地域の価値を最大化させるシステムやライフスタイルを構築する」というのが役割なのかなと思っています。もちろん、まだまだ発展途上中です。
ファブラボは日本でもどんどん増えていますけど、「結局、ファブラボってどうなの?」という段階にきているのではないでしょうか。今後は人材の育成やさまざまな活動など、来場者数や機材の利用者数といった数字以外の部分でしっかりとアウトプットをしていくことがさらに重要になっていくのではないかなと思っています。
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