モノづくり素人が“何か”を作る無謀なプロジェクト始動:「Product for 1000」挑戦記(1)(2/4 ページ)
「Product for 1000×3Dモデラボ×Mozilla Japan」特別企画。3Dプリンタをはじめとするデジタルファブリケーション機器の普及・発展により、“個人のモノづくり”がより身近になってきたというけれど本当なの? どうやって始めるの? そんな疑問を持ったモノづくりド素人が「だったら自分たちで実践してみよう!」と、「Product for 1000」というフレームワークを使い、モノづくりプロジェクトを立ち上げた。
2.自分の価値観に“カタチ”を与える
芸短大での学生たちとのプロジェクトが終わった9月のある日――。これまでにも“Webページの味”のお酒が飲めるカクテルマシン「weburette」など、さまざまなFABプロジェクトをご一緒してきたMozilla Japanの赤塚大典さんからの紹介で、「3Dモデラボ」との合同プロジェクトに参加することになりました。
このプロジェクトを一言で表すならば、「カタチはまだない」です。
3Dモデルデータの共有コミュニティーサイトである3Dモデラボと、Webブラウザ「Firefox」などのオープンソースプロジェクトで知られるMozilla Japanが一緒になって、「WebとFABが一緒になったら、どんなことができるのだろうか?」と、その可能性を探るべく“(素人だけど)自らモノづくりをしてみよう!”と検討している中に、平本と神田が講師としてサポートに入り、PF1000のフレームワークを取り入れる運びとなったのです。
「モノづくりの環境」と「モノづくりの機会」――。どちらが、モノづくりに必要でしょうか? こんな問いはさまざまなシーンで繰り返されていますが、3Dプリンタの個人利用の普及によって爆発的に広まりつつあるFABカルチャーでは、圧倒的に「モノづくりの機会」、つまり、作りたいと思う“きっかけ”の方が優位であるといえます。目の前にデジタルファブリケーション機器がそろっていても作りたいモノがなければ何も生み出せません。
“カタチはまだないプロジェクト”のメンバーで議論を重ね、3Dモデラボというプラットフォームを使って、より作りたいモノを見せていく方向にしました。もちろん、作りたいモノというのは“本人にとって価値のあるモノ”であり、もしかしたら“他の人にとってはなくてもよいモノ”なのかも知れません。ただ、この取り組みを通じて、自分の作りたいモノをどうやって作っていったのかという“プロセス”そのものを発信することで、「自分もこうやって作ってみよう!」と皆さんの背中を押すきっかけ(モノづくりの機会)につなげることができたらなと思っています。
それにしても、“カタチはまだないプロジェクト”のメンバーはなかなかのツワモノ(?)ぞろいです。3D CADを使いこなせるのは講師役の平本と神田のみで、3Dモデラボ“中の人”であるやぎさわさんが「Autodesk 123D Design(以下、123D)」の初心者。他2人、3Dモデラボメンバーのdyamaokaさんとうでみさんは“超”初心者です。ちなみに、Mozilla Japanの赤塚さんも、プログラミングはお手のものですが3Dモデリングの経験はありません。本当にこのメンバーでモノづくりができるのか……。不安な気持ちになりますが、「いやいや、いかにFAB初心者であっても、デジタルファブリケーションの扉は平等に開かれているはず!?」……と信じて、プロジェクトが晴れてスタートしました。
3.キーワード探し
PF1000の最初のワークは、デザインではなく「言葉(キーワード)」を書き出すことから始まります。
Q1:あなたが持っているモノの中で、お気に入りを教えてください。お気に入りのモノを10個挙げてみましょう!!
Q2:なぜそれらがお気に入りなのでしょうか? それらを気に入っている理由や思い、エピソードを書いてみましょう!!
この段階では、何を作るのかをいったん忘れ、自分が所有しているお気に入りのモノに着眼し、なぜ自分がそれを使っているのか? という価値観を知ることを目的としています。例えば、共通する色や質感であったり、手に入れた経緯であったり、特定のシチュエーションで見つけたモノであったりします。ここでは、モノに隠された自分の価値観をキーワードとして書き出していきます。
そして、「お気に入り」の価値観をキーワードに落とし込んだところで、今度は欲しいモノを探るワークに移ります。
Q3:あなたが今欲しいモノを考えてみてください。“超”欲しいと思えるモノを10個挙げてみましょう!!
Q4:なぜそれらを欲しいと思ったのでしょうか? それらを欲しいと思った理由や思い、エピソードを書いてみましょう!!
お気に入り、欲しいモノ、それぞれに全く別のキーワードが浮かび上がってきます。モノから抽出した「WHY」のキーワードを、以下のように最後に文章化します。
私は、○○○(お気に入りのキーワード)な価値観を持っている。
だから、○○○(欲しいモノのキーワード)のための道具を作ってみたい。
ここではまだ、「“ものづくり系女子”とひと目で分かるアイコン」としての道具、など抽象的なイメージにとどまっています。実際に何を作るのかは、次のワークで“カタチ”を与えていきます。
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