モノづくり素人が“何か”を作る無謀なプロジェクト始動:「Product for 1000」挑戦記(1)(3/4 ページ)
「Product for 1000×3Dモデラボ×Mozilla Japan」特別企画。3Dプリンタをはじめとするデジタルファブリケーション機器の普及・発展により、“個人のモノづくり”がより身近になってきたというけれど本当なの? どうやって始めるの? そんな疑問を持ったモノづくりド素人が「だったら自分たちで実践してみよう!」と、「Product for 1000」というフレームワークを使い、モノづくりプロジェクトを立ち上げた。
4.カタチの作り方
モノのカタチにはさまざまな機能が宿っています。外観の印象はもちろん、握りやすさ、つかみやすさ、安定性、軽さ、さまざまな機能が設計され、カタチになっています。また、説明書がなくても、どこをどうすればよいかが分かる、そうした役割もカタチは担っています。
そのモノを表す「名前」も重要な要素です。例えば「台所」にある「まな板」、「キッチン」にある「カッティングボード」、どちらも大体同じ意味ですが、「まな板」を「カッティングボード」として捉えると、調理場だけでなく食卓に登場してもよさそうな気がしてきます。
PF1000の最初のワークで作ったコンセプトの文章では、まだ名前のない状態で、「何を実現する道具なのか」ということだけが示されています。「寝具」ではなく、「安眠のための道具」であれば、「寝具」に加えて「リラックスできる香りのアロマオイル」や「心地の良い空間を作り出す照明」なども含まれます。また、「枕」というモノにフォーカスした場合でも、「寝るための枕」ではなく、「朝のヘアセットを楽にする寝ぐせ予防&ヘアスタイリング枕」といったさまざまな機能を付加して考えることもできます。ちょうど、Webブラウザでお気に入りのWebサイトをブックマーク管理したり、さまざまなアドオン機能でアプリケーションとの連携を行ったりするように、モノにも機能をアドオンできる可能性が広がっているのではないでしょうか。
Tips 3:
「プロダクトをデザインする」というと、まだまだハードルが高い印象があります。特に、MONOist読者の方のようなエンジニアの人たちにとっては、専門がある故に“設計とデザインは別モノ”と感じられるかもしれません。もちろん、それぞれに専門がある分野ではありますが、個人で何かモノを作ろうと思ったら、どちらも欠かすことはできません。モノづくりの専門知識のない方でも「この取っ手がもっとこんなカタチになっていれば、(自分にとって)より使いやすいのに……」というカタチへの欲求を感じたことはあるでしょう。そうした“カタチから始まるアレンジ”だけではなく、フルスクラッチで“ゼロからカタチを起こしていく”ことが、これから誰にでもできるようになっていく――。今はその過渡期といえるのではないでしょうか。
5.素人の本気!
自分の価値観をキーワードとして抽出し、コンセプトを1つの文章にするところまでを約3時間で駆け抜けた、“カタチはまだないプロジェクト”のメンバーたち。2週間後の10月のある日、再びMozilla Japanオフィスに集合し、宿題となっていたアイデアスケッチを共有するところから第2回がスタートしました。
今回のプロジェクトはCADもデザインも素人のメンバーで、どこまでモノづくりができるのか、というチャレンジでもあります。そんな中、参加メンバーたちが見せてきたスケッチはまさに「素人の本気」でした。
出てきたのは、「ドアノブ型チェックイン情報発信装置(?)」「変わったカタチの黒いUSBメモリカバー」「『ゆ』の文字型『湯』のみ」「湿布型バイタルモニタリングウェアラブルデバイス」など、奇想天外な発明グッズがずらり。しかも、全員最低限の“絵心”はあるようで、ホッとしました。
前回のワークで、「いきなり何か作れといわれても……」と尻込みをしていた姿はどこにもありません。ただ単にカタチの面白さを狙ったモノではなく、それぞれ自分の価値観を下敷きにアイデアを考えているので、「この道具を使えば、こんな体験が実現できる」と明確なコンセプトが示されています。
キーワード化のときから感じていたのですが、メンバー全員が“実現可能かどうかかなり怪しいプロダクト”に対し、とっても自信満々にアイデアを紹介してくれました。それだけ、作っている(考えている)本人が楽しめている証拠ともいえますが、実際のところ今の段階でモノにできるかどうかは分からない状況です。平本と神田の講師チームは「あれなら3Dプリンタでできるかな」「あの電子工作部分はちょっとヤバイかも」といったFABに至るプロセスをシミュレーションしながらフィードバックを行います。
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