3Dプリンタとインターネットが掛け合わさる領域でこそ本当に面白いモノが生まれる:3Dプリンタの可能性を探る(3)(2/2 ページ)
ローランド ディー. ジー. 主催イベント「monoFab Experience Day」の特別講演に登壇した慶應義塾大学 環境情報学部 准教授 田中浩也氏の講演から、教育における3Dプリンタの可能性、3Dプリンタとインターネットによる新しいモノづくりの在り方について紹介する。
3Dの“オープンデータ化”、触れる教材
3Dプリンタとインターネットというと、3Dデータのオープン化も気になる話題だ。米国では、インターネット上での3Dデータの無料公開、オープンデータ化への議論・取り組みが日本よりも進んでいる。
米国は、政府関連機関が所蔵しているモノはできるだけ3Dデータ化してインターネット上に公開するよう推奨している。その結果、恐竜やマンモス、分子構造、人工衛星や小惑星、ジェットエンジンなどのさまざまな3Dデータが誰でも無料で入手できるようになった。「この取り組みは教育的な意味も大きく、これらのデータを入手し、3Dプリンタで出力すれば“触れられる教材”として、子どもたちの学びに役立てることができる」(田中氏)という。
実際に立体物として触れられるという点は、図工や技術などのモノづくり系の授業だけでなく、地理や歴史、物理の授業でも理解の助けになる。「教科書の文字や写真を見て、文字を書いて覚えるのとセットで、“触れて学ぶ”という新しい学習を実現できるのが、教育現場での3Dプリンタ活用の1つの形といえる」と田中氏。一方、日本でも少しずつ3Dデータのオープン化が進みつつあり、国土地理院が地理院地図の3Dデータを無償公開し、地理の授業などで使われているケースもあるそうだ。
総務省の「『ファブ社会』の展望に関する検討委員会」の座長も務めている田中氏は、「これまでの情報・通信の授業はPCやインターネットを用いてドキュメント作成やプログラミングなどを学ぶもので、画面内で完結してしまうものだった。しかし、3Dプリンタのようなツールの登場により、これからの教育はインターネットから3Dデータ(情報)を探し出し、手元で物質化して触れられる状態にするというフィジカル化による体験もできるようになってきた。この新しい流れは、今後の教育を考える上で重要なものといえるだろう」と田中氏は説明する。
タブレット端末をデジタル教科書として教育現場で活用する動きもあるが、“調べる”学びには向いているが、“作る”学びにはタブレット端末だけではカバーし切れない。「これからは、3Dプリンタのような情報を物質化するツールも教育現場でミックスして使っていかなくてはならないだろう」と田中氏。
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