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ERPの導入効果を整理して投資の妥当性を判断しよう中堅製造業のためのグローバルERP入門(3)(1/2 ページ)

中堅製造業に効果的なグローバルERPの活用方法と、失敗しない導入方法を解説する本連載。第3回のテーマは、ERPを導入した場合の効果についてだ。

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 日系製造業にとってグローバル化が必須となる中、中堅製造業にとってもグローバル環境でのIT基盤整備が注目を集めています。その基盤として有効であるERPについて、その本質的な意義やメリット、失敗しない導入の進め方などを解説していく本連載。前回の「システムをうまく導入するには、まず“ガバナンスの把握”が必要なんです」では、ERP導入の最初の段階で把握すべき企業のガバナンスについて解説しました。

 第3回となる今回は、ERPを導入した場合の効果について解説します。中堅企業にとってERP導入が経営に与えるインパクトは小さくありません。投資した後に「こんなはずではなかった……」と後悔しないためには、ERP導入による効果を正しく認識した上で、ERPに何を求めるのかを明確にすることが重要です。そのため、ERP導入による効果経営層に投資の妥当性を理解してもらうためのポイントや留意点について説明します。




ERP導入による効果とは?

 ERP導入による、最も大きな効果は経営状態を可視化できることです。これまで営業や工場、経理など各業務個別に構築されていたシステムが統合され、1つのデータベースに情報が集約されます。情報がリアルタイムで連携され、一元管理されることにより、全社的な業務活動の状況や業績が即時で把握できるようになります。

 このような効果が期待できるERPですが、以下のような悩みを抱えている企業にとっては、特に有効な解決策となります。

システムがバラバラで状況が把握しにくい

 拠点や業務ごとに複数のシステムが乱立しているような状態だと、情報がバラバラに管理されているため、通常は月次決算を待たないと数字が見えません。そのため、問題が発生しても、それを認識するタイミングが遅くなるため「タイムリーなアクションが取れない」という状態になりがちです。また、システム間のつながりがないので、出てきた数字の根拠を調査するにも、複数のシステムを参照することになり手間が掛かります。

 ERPでは、日々の営業活動や工場の生産活動の結果を、リアルタイムで共有することができます。例えば、工場から顧客に製品を出荷すると、その内容が売り上げ情報として会計システムに連携されるため、本社にいながらどのロケーションでどの製品がいくらで売れたのかを把握できます。従って、何らかの問題が発生した場合も即時に状況を把握して、改善のためのアクションを講じることができるようになります。

業績管理に必要な数字が取得できない

 経営層から、業績管理のためのさまざまな情報の提出を求められても、集計に多大な時間がかかったり、データそのものが取得できなかったりする場合があります。原因としては、システムごとに製品や取引先などのマスターデータがバラバラになっているためで、手作業でコード変換を行わないとデータが集計できません。また、システムに入力している情報の粒度が粗いため、欲しい情報が取得できないようなケースもよくあります。例えば、ある仕入れ先からの購買情報を請求書の金額で一括計上しているため、費用の内訳が把握できない、などの問題が発生します。

 ERPを導入すると、各領域で統一のマスターデータを利用することになります。そのため、営業も工場も経理も、全て同じマスターデータを用いて情報を管理しますので、コード変換が不要になり、即時に集計することができます。

 また、取引の発生時に入力した情報が会計まで連携されるため、何かの異常値が見つかったときに、原因の分析が容易になります。ERPでは、仕入れ先に注文書を発行するときに入力したデータを、入荷や仕入の情報として転用します。注文書には、購入する品目ごとに数量と単価を入力していますので、購買情報としても品目別の明細を保持しており、購買金額の内訳を分析するのに役立ちます。

拠点追加の対応が大変

 グローバル化の進展やM&Aの増加により、短期間で拠点を立ち上げるケースが増えています。近年では、営業活動や生産活動を実行するには、システムによるサポートは不可欠であるため、拠点を追加するたびにシステムも準備することになります。

 国内であれば、新しいサーバを構築してプログラムをコピーし、必要なマスターデータを準備すれば、新しい拠点でもシステムを稼働させることができます。しかし、海外に拠点が増える場合には、それほど簡単ではありません。現地の言語や通貨で利用できるようにするだけでなく、法制度にも対応する必要があり、これには非常に大きな手間が掛かります。独自開発したシステムでは、構造的に日本円以外の通貨が利用できないような場合もあります。運用開始後も、現地の法制度が変更になる都度、プログラムを改修することになります。

 この点についてもERPであれば対応が容易です。システムの構造的に、複数会社・複数拠点を管理する仕組みになっているので、拠点が増えた場合でも、会社マスターデータや営業所マスターデータなどを登録すれば、すぐに使い始めることができます。また、グローバル対応の製品では、多言語・多通貨にも対応していますし、各国の法制度にも準拠しています。法制度が変更になった場合も、製造元(メーカー)が修正プログラムを提供してくれます。このように、ERPを活用することによって、拠点が増える場合でもシステムを短期導入できるため、変化の激しい経営環境においては非常に有効な方法だといえるでしょう。

ERPの副次的な効果

 また、ERP導入の副次的な効果として、人材育成や業務標準化、システム基盤整備につながるということも付け加えておきます。

 一般的な企業では、基幹システムの全面刷新は10年に一度の一大プロジェクトです。特にERP導入では、全社横断的に自社の業務の流れとデータの構造を把握することになるので、参画したメンバーにとっては非常に良い学習の機会になります。スカイライト コンサルティングでもERPプロジェクトを立ち上げる際には、顧客企業の中堅・若手社員のエース級を参画させるように、強く推奨しています。

 同時に、パッケージの標準機能を活用することで、業務の属人化を解消しグローバルで標準化を推進することができます。また、拠点別・業務領域別に複数のシステムが1つのシステム基盤で統合されるため、システム部門の保守運用の負荷が低減され、費用の削減にもつながります。

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