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システムをうまく導入するには、まず“ガバナンスの把握”が必要なんです中堅製造業のためのグローバルERP入門(2)(1/2 ページ)

中堅製造業に効果的なグローバルERPの活用方法と、失敗しない導入方法を解説する本連載。第2回では、ERP導入の最初の段階で把握すべき、企業のガバナンスについて解説します。

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 日系製造業にとってグローバル化が必須となる中、中堅製造業にとってもグローバル環境でのIT基盤整備が注目を集めています。その基盤として有効であるERPについて、その本質的な意義やメリット、失敗しない導入の進め方などを解説していく本連載。前回の「海外法人の“損益だけしか見えない”経営では、ビジネスチャンスはありません」では、ERP導入がグローバル環境での経営管理基盤構築手段として有効であることを紹介してきましたが、第2回となる今回は、ERP導入の最初の段階で把握すべき、企業の「ガバナンス(統治)」について解説します。




ガバナンスの意味

 「ガバナンス」という言葉は使われる場面によって意味が異なります。今回はERPのグローバル展開において使われているガバナンスを対象とし、「各拠点における企業活動を管理(状況を把握)・運営(業務の実施やITを運用など)するための制度的・実質的な仕組み」を指すこととします。

 グローバルでERPを導入する場合、本社で検討した「目的」「領域」「業務」「機能」「管理メッシュ」「導入手法」で一貫して導入することが、効果的でかつ合理的だと考えられます。ところが実際には、拠点ごとに目標や業務、管理方法などが異なるために、同じ条件では導入が実現できないことが多いのが現実です。

 このため、プロジェクトを開始するに当たり「現状のガバナンスレベルに基づいて進めていくのか」もしくは「ガバナンスをより効かせるように変更していくのか」をプロジェクト計画段階で決定する必要があります。また、各拠点のガバナンスレベルによってプロジェクトの体制やコミュニケーション方法、各種意思決定プロセスなどを考える必要があります。

 以上のことから、グローバル環境下でのERP導入では、最初の段階で現状のカバナンスの状況を把握する必要があるのです。

グローバル事業におけるガバナンスの問題点

 ガバナンスがうまく効いていない状態では、海外拠点の情報が思うように入手できません。そのため、各拠点がブラックボックス化し、さまざまな問題が生じることになります。国内拠点と比較すると、海外拠点では地理的な要因はもちろん、言語の違いや文化・慣習の違いにより、格段にコミュニケーションギャップが発生しやすくなります。

 例えば、拠点ごとに製品の開発や販路の開拓、それに伴う業務プロセスの決定権などが与えられている場合があります。この場合、本社からの業務設計に関する指示が拠点では受け入れられないことがあります。他の例では、人事権を海外拠点が握っていてプロジェクトの現地メンバーのリソースが確保できなかったり、各国の商慣習や法律が把握できず業務設計やシステム設計ができなかったりします。そもそも現地でベンダーを雇い独自にシステムを開発・運用しているため、各拠点で使用しているシステムが不明だという事例もあります。

 先ほども述べましたが、ガバナンスの状況により、プロジェクト計画が大きく変わるため、まずは何よりも、事前に各拠点の状況を把握することが、問題点を解決する早道といえるでしょう。

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