フリースケールとアルプス電気が提携を強化、「クルマをIoTにする」:車載半導体
フリースケール・セミコンダクタ・ジャパンとアルプス電気は、両社が提携して開発している車載情報機器向け製品のラインアップを強化する。テレマティクスに用いる通信接続が可能なモジュール製品を投入し、「クルマがIoTになるトレンドを加速させる」(フリースケール)という。
フリースケール・セミコンダクタ・ジャパンとアルプス電気は2014年9月30日、東京都内で会見を開き、両社が提携して開発している車載情報機器向け製品ラインアップの強化内容を紹介した。
両社は2012年10月、車載情報機器向けプラットフォームの共同開発について発表している(関連記事:通信接続する車載情報機器の開発期間短縮へ、フリースケールとアルプスが協業)。フリースケールのSoC(System on Chip)「i.MX 6シリーズ」と協調して動作する各種通信モジュールをアルプス電気が開発するというものだ。フリースケール・セミコンダクタ・ジャパン社長のデイビッド M.ユーゼ氏は、「車載分野で事業を展開する上でコネクティビティ(通信接続)がなくて困っていた当社にとって、アルプス電気との協業は極めて重要なものだった。両社の協業ソリューションは、複数の自動車メーカーに採用されるなど成功を収めている。本日発表する製品ラインアップの強化により、ADAS(先進運転支援システム)を実現する上で極めて重要なテレマティクス分野にも展開を広げることが可能になった。クルマは、コネクティビティを持つことによってIoT(モノのインターネット)になる。当社とアルプス電気の協業によってその流れを加速させたい」と強調する。
アルプス電気のM6技術部部長を務める泉英男氏は、「車載情報機器がスマートフォンと連携するようになり、通信機能を持ったコネクテッドカーの開発に向けた動きが強まっている。そして、米国で2020年からの導入が見込まれている車車間通信や路車間通信などのテレマティクス技術もコネクテッドカーを構成する重要な要素だ。今回の製品ラインアップの強化では、それらテレマティクス技術に対応するモジュール製品を投入する」と声を合わせる。
2012年10月の発表以降に投入された通信接続モジュール製品は4つある。FM/AMラジオの受信に対応する製品、欧州のDAB(Digital Audio Broadcast)などのデジタルラジオの受信に対応する製品、2.4GHz帯のWi-Fi(IEEE802.11b/g/n)とBluetoothに対応する製品、GPS(全地球測位システム)信号の受信に対応する製品である。これら4つのモジュールは、i.MX 6シリーズの開発ボード「SABRE」に接続可能なドーターボードとしても供給されている。
今回の発表では、新たに4つのモジュール製品を加える方針が明らかになった。まずWi-Fi/Bluetooth対応については、新たに5GHz帯のWi-Fi(IEEE802.11a)にも対応可能な製品を2014年10〜12月期に投入する。また最高速のWi-FiであるIEEE802.11acに対応する製品も2015年1〜3月期に発表する予定だ。新たに投入するLTEや3G、2Gなどの携帯電話通信に対応する製品と、欧米のテレマティクスに用いられる5.9GHz帯の通信に対応する製品は2014年末〜2015年初にかけて発売する。モジュール製品とともに、各種ドライバや通信プロトコル処理用ミドルウェアといったソフトウェアも提供する。「顧客の採用するOSへの対応といったカスタマイズも当社で行っている」(泉氏)という。
IoT向けの「i.MX 7」と高性能機器向けの「i.MX 8」
会見では、今後の「i.MXファミリ」の展開も示された。i.MXファミリは、車載分野以外にもさまざまな用途で使えるSoCである。当初は、開発サイクルが最低でも3年と長い自動車への採用は進まなかったものの、最近になって車載情報機器やメータークラスタなどに搭載される事例が増えている。2018年には、i.MXファミリの出荷のうち半分が車載分野になる見込みだという。
i.MXファミリの最新製品は、ARMのアプリケーションプロセッサコア「Cortex-A9」を1〜4個搭載するi.MX 6シリーズである。このi.MX 6シリーズの次世代品として、下位展開の「i.MX 7シリーズ」と、上位展開となる「i.MX 8シリーズ」の開発が進められている。
i.MX 7シリーズは、IoT向けとしてコスト重視の市場に対応する製品になる。一方、i.MX 8シリーズは、先進的なADASやマルチメディアの処理といった高性能要求に対応する製品であり、「Cortex-A50シリーズ」などの「ARMv8アーキテクチャ」ベースのプロセッサコアを採用する計画である。
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