小排気量クリーンディーゼルの開発、最大の難関は経営陣の説得だった:マツダ パワートレイン開発担当者 インタビュー(2/2 ページ)
マツダの新型「デミオ」に採用された排気量1.5l(リットル)のクリーンディーゼルエンジン「SKYACTIV-D 1.5」は、排気量2.2lの「SKYACTIV-D 2.2」の発表から3年足らずで開発された。新世代技術「SKYACTIV」に基づくパワートレインの開発を統括する仁井内進氏に、SKYACTIV-D 1.5の開発の背景や、今後のパワートレイン開発の方向性などについて聞いた。
「SKYACTIV-DRIVE」を多段化する必要はない
MONOist 新型デミオには、排気量1.3lのガソリンエンジン「SKYACTIV-G 1.3」も採用されます。SKYACTIV-G 1.3と聞くと、2010年10月にマイナーチェンジしたデミオに採用したエンジンを思い浮かべますが、今回は仕様が異なるようですね。
仁井内氏 SKYACTIV-G 1.3を搭載する従来モデルのデミオは、「ハイブリッド車と同レベルの燃費」という目標のもと、燃費向上に主眼を置いて開発しました。またトランスミッションには、SKYACTIVベースの自動変速機である「SKYACTIV-DRIVE」ではなくCVT(無段変速機)を用いていました。
新型デミオのSKYACTIV-G 1.3は、SKYACTIV-DRIVEとの組み合わせを前提に走行性能をさらに高めています。圧縮比は14から12に下がりましたが、走りと燃費のトータルバランスは極めて高いレベルでまとめられたと考えています。
MONOist お話に出たSKYACTIV-DRIVEは6段変速です。しかし最近の自動変速機開発では、8段変速や9段変速といった多段化が主流になっています。マツダでもSKYACTIV-DRIVEの多段化は検討されているのでしょうか。
仁井内氏 自動変速機は単純に多段化すれば燃費が良くなるというものではありません。多段化は、エンジンの熱効率の良い領域を使いやすくするために変速比の粒度を増やそうという考え方に基づいています。
しかし、エンジンの熱効率が良い領域を広く取れているのであれば、わざわざ多段化する必要はないのです。現在のSKYACTIV-GやSKYACTIV-Dは、まさにそういったエンジンです。それらのエンジンから高い走行性能や燃費性能を引き出すのに最適な自動変速機として開発したのが、6段変速のSKYACTIV-DRIVEなのです。
MONOist 以前、マツダがディーゼルハイブリッドを開発しているという報道がありました。マツダは内燃機関のさらなる進化にこだわる姿勢を示していますが、ハイブリッドについてはどのように考えていますか。
仁井内氏 開発中のパワートレインについて詳細を話すことはできません。ただしパワートレイン開発の大きな方針については説明できます。
当社には、技術的にはどのようなパワートレインでも開発できる力はあります。パワートレイン開発で最も重要なことは、パワートレインそのものの開発ではなく、クルマに最適なパワートレインをどうやったら開発できるかです。例えばアクセラは、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、ハイブリッドと3つの動力源を用意しました。これは、Cセグメントのコンパクトカーという、グローバル市場で極めて幅広い顧客層を持つアクセラだからこそ選択肢を3つそろえたのです。
MONOist ディーゼルハイブリッドというパワートレインについてはどう考えていますか。
仁井内氏 ハイブリッドシステムは、低中速域の走行性能をサポートするために用いられます。もともと低中速域を得意とするSKYACTIV-Dは、理想燃焼を目指した次の段階に向けてさらなる開発を進めているところです。そんなSKYACTIV-Dにハイブリッドシステムが必要かどうかは、原理原則で考えればおのずと答えは出るのではないでしょうか。
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