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国内回帰はあるのか!? 製造業の国内設備投資、業績回復しているのに1.7%減モノづくり最前線レポート(1/3 ページ)

日本政策投資銀行は、大企業の設備投資の状況について調査した「2014年度設備投資計画調査」をまとめ、その概要を発表した。決算などにおける企業の業績回復は進む一方で国内設備投資の減少傾向が続いている現状が明らかとなった。ただ2014年度以降は国内向け設備投資増加が計画されており、国内回帰の動きが強まる兆しも見え始めている。

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 日本政策投資銀行は2014年8月5日、大企業の設備投資の状況について調査した「2014年度設備投資計画調査」をまとめ、その概要を発表した。その結果によると、製造業の2013年度(2013年4月〜2014年3月)の国内設備投資は、前年度比1.7%減少した。一方で2014年度(2014年4月〜2015年3月)は大幅に増加し18.5%増という計画を示している。

 日本政策投資銀行の設備投資計画調査は1956年に開始。主要企業へのアンケートにより設備投資の基本的動向を調査する。調査の対象企業は資本金10億円以上の民間法人企業で2014年6月に調査を実施。回答社数は2246社(海外投資については1267社)だった。

業績回復が目立つが設備投資は減少

 具体的に調査結果について見ていこう。製造業の2013年度の国内設備投資は1.7%減という結果となった。自動車業界では主要5社が過去最高益を達成するなど、2013年度の大手企業の業績は回復傾向が目立っているが、これらの結果が国内の設備投資にはそれほど反映されていない現状が浮き彫りになる結果となった(関連記事:トヨタ、為替のゲタを脱いでも四半期過去最高益――「踊り場」との慎重さは崩さず)。一方で2014年度については、製造業の国内設備投資は前年度比18.5%増を計画しているとされており、大幅な増加を計画する企業が多いようだ。

photophoto 2013年、2014年度の国内設備投資動向(左)と1990〜2014年度の国内設備投資増減率推移(右)(クリックで拡大)

 実際に国内への設備投資を増額するという企業も増えている。「2014年度の資金計画において資金配分を増やす使い道」を聞いた質問では、全回答者の52.6%が「国内設備投資」を挙げ、最も高い比率となっている。ちなみに2位が「海外設備投資」(26.3%)、3位が「研究開発」(25.4%)という結果となっている。

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2014年度資金計画において前年度に対し資金配分を高める使い道(クリックで拡大)

 特に国内への設備投資を大きく伸ばす計画をしているのが、化学メーカー、自動メーカー、鉄鋼メーカーだ。化学メーカーでは航空機やエコカー関連および電子・電池向けなどの高機能部材で投資を伸長させる計画だという。また自動車メーカーはエコカー関連の技術開発や基幹部品の生産設備などで増加。鉄鋼は高炉改修に加えて品質や生産性向上に向けた投資で増加するという。

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2014年度設備投資計画において増加の大きな業種(クリックで拡大)

投資動機は「維持・補修」

 ただ、これらの投資増加の中で最も大きな投資動機となっているのが「維持・補修」(27.3%)だ。1986年以来の統計の中で、4年連続で過去最高となっており、既存設備の老朽化が進んでいることが伺える。

 「新製品・製品高度化」や「研究開発」「合理化・省力化」などの投資比率がそれほど変化していないのに対し、「能力増強」と答えた回答者の比率は年々落ち2014年度の計画では20.9%となっている。人口減少局面に入り、市場としての魅力が失われつつある日本での生産能力増強のための投資は今後ますます考えにくい状況になることが予想される。

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製造業の投資動機の比率の推移(クリックで拡大)

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