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落ち着きを見せ始めた3Dプリンタブーム、DMS全体の雰囲気にも変化の兆しプロダクトデザイナーが見たDMS2014(4/4 ページ)

今回も3Dプリンタ関連が注目を集めた「第25回設計・製造ソリューション展(DMS2014)」。ここ数年、同展示会に何となくマンネリ感を感じていたプロダクトデザイナーの林田浩一氏は、DMS2014から変化の兆しを感じたという。

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バーチャルリアリティ展で感じたこと

 DMS会場を歩いているとそのまま地続きで、「バーチャルリアリティ展(IVR)2014」の会場エリアとなる。見ようによっては「いかにモノを手早く作って活用するか」という技術展示の隣で、「いかにモノを作らずに済ますか」という技術展示が並んでいるようにも見え、どことなく面白さもある。

 こちらの方は、モノづくりという面ではまだ発展途上なのかな、という印象だ。デモンストレーションされているコンテンツの中には、「前回、もしかしたら前々回も同じじゃなかったでしたっけ?」なんてものも。バーチャルリアリティ(VR)分野は、エンターテイメント系市場とモノづくりなど産業系市場、それぞれこれからの発展が楽しみといったところか。

 視覚情報が主体の現状のVRが、五感を刺激するものにまで広がれば、一気に活用シーンは増えそうではある。モノづくり関連では、製品開発シーンでのシミュレーション、工場での組み付けや作業シミュレーションといったことが考えられる。利用シーンを開発だけでなくエンドユーザーまでのバリューチェーンの中で想定していくと、3Dプリンタのハイエンド機、ローエンド機のような使い分けも必要になってきそうだ。

 例えば、製品開発の初期段階で関連部門間を横断したコミュニケーションツールとして使う際には、プロ同士のコミュニケーションなのでさほどリアル感は必要ないかもしれない。その一方で、エンドユーザーへの販売ツールという役割ではリアル感の追求が必要であろう。販売後のメンテナンスを担当するエンジニアのトレーニングというシーンでもリアル感は必要かもしれない。

 VRのみならず3Dデータをモノづくりの中で活用することにより、製品化以前のモノを減らすという動きはどんどん進化しているので、製品開発の手法もこれから変化していくだろう。筆者がキャリアをスタートしたカーデザインの世界では、粘土で作った原寸大のモックアップ(クレイモデル)で造形面の作り込みを行うことが手法として定着している。2011年にランボルギーニが「アヴェンタドール」を発表した際、クレイモデルを一切作らずにデザインしたとアナウンスされた。ここまで徹底したデザイン手法を取っている企業はまだごくわずかだし、カーデザインということで言えば、このデザイン手法がフィットするクルマとそうでないクルマがあると思う。しかし、1つの方向性を示した例ではある(ランボルギーニは最近発表した「ウラカン」でも、クレイモデルなどの物理的なモデルなしに、デザイン開発がなされたとアナウンスしている)。

クレイモデルを作らずに開発されたランボルギーニの「ウラカン」(クリックで拡大)

 また余談だが、IVRの会場では、デモンストレーション用のクルマの素材として、やたらと「アウディR8」が眼に付いた印象があるが何か理由があるのだろうか?(ランボルギーニとアウディが同じフォルクスワーゲングループの傘下にある、というのは何も関係ないと思うけど)

DMS、少々様子が変わってきたかも?

 今回のDMSでもIVRでも、機器類のスペックを語る場としているブースもまだまだ多い。しかし、ツールを使ってどういうモノ作りをするかという視点での展示を行うブースが以前より増えてきているのではないだろうか。そういった様子は、モーターショーで自動車メーカーが「売らないクルマ」であるコンセプトカーを使って、未来や自社の方向性をプレゼンテーションしているのと共通したものを感じる。

 商談の場の色合いが強かったDMSやIVRも、モーターショーのような少し先の未来をプレゼンテーションする場としての役割を求める来場者が増えているのかもしれない。

 最後にこんなことを書いてもいいものか多少の迷いもあるが、ここ数年は何となくDMSにマンネリ感のようなものを抱いていたというのも正直な部分である。展示されている内容は前年の微修正というような想定内で、驚きや発見が少なかったなと帰り道には思っていた。しかし、今回は良い変化か良くない変化なのか分からないが、わずかながら会場の雰囲気が変わってきたと感じての帰り道となった。さて、2015年はどうなるだろう?

Profile

林田浩一(はやしだ こういち)

デザインディレクター/プロダクトデザイナー。自動車メーカーでのデザイナー、コンサルティング会社でのマーケティングコンサルタントなどを経て、2005年よりデザイナーとしてのモノづくり、企業がデザインを使いこなす視点からの商品開発、事業戦略支援、新規事業開発支援などの領域で活動中。ときにはデザイナーだったり、ときはコンサルタントだったり……基本的に黒子。2010年には異能のコンサルティング集団アンサー・コンサルティングLLPの設立とともに参画。最近は中小企業が受託開発から自社オリジナル商品を自主開発していく、新規事業立上げ支援の業務なども増えている。ウェブサイト/ブログ誠ブログ「デザイン、マーケティング、ブランドと“ナントカ”は使いよう。」などでも情報を発信中。



第25回 設計・製造ソリューション展特集

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