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落ち着きを見せ始めた3Dプリンタブーム、DMS全体の雰囲気にも変化の兆しプロダクトデザイナーが見たDMS2014(3/4 ページ)

今回も3Dプリンタ関連が注目を集めた「第25回設計・製造ソリューション展(DMS2014)」。ここ数年、同展示会に何となくマンネリ感を感じていたプロダクトデザイナーの林田浩一氏は、DMS2014から変化の兆しを感じたという。

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「ラピッドプロトタイピング」は薄まってきたか

 今回会場を歩いてみて、試作屋さんとかサービスビューローといった分野のビジネスも少しずつ様子が変わってきている印象を受けた。筆者は、DMSに限らず製造業系の展示会で、こういった分野の展示ブースを訪れる際には、「どういう材質のものができるか」、「どれくらいのサイズまで対応できるのか」といったことに加えて、「3Dデータを作るところから対応可能か」という問い掛けをしてみることをしている。これは、自分がモックアップを発注したり、少量生産の案件に関わったりする中で、「意匠検討のモックアップを作るのか作らないのか」、「3Dデータは誰が作るのか?」といったプロジェクトを取り巻く条件は、案件ごとに異なる。いざというときの選択肢を用意できるように、展示会で情報をインプットしておきたいのだが、この中の「3Dデータを作るところから対応可能か」という問いかけに対しての反応が、以前と比べると変化してきていると感じる。

量産と同じ樹脂でインジェクション成型試作を行う目的で、3Dプリンタを使って簡易型を作った事例
量産と同じ樹脂でインジェクション成型試作を行う目的で、3Dプリンタを使って簡易型を作った事例。ストラタシスのブースにて(クリックで拡大)

 ほんの数年前には、表現は悪いが「3Dデータを出すなら作ってやるよ」という対応の展示ブースもあった(昔ながらのモデル屋さん、試作屋さんという感じ)。それが年を経るごとに「3Dデータ作りも、やらないことはない」という対応の企業が少しずつ増えてきたなと思ったら、今回は「3Dデータを作る部分だけでもOK、2Dの図面からならこうこう、デザインモデルを測定した場合はスキャンのみならこうこう、CADデータまで作る場合はこうこう」とレスポンスよく提供サービスの概要を聞くシーンが増えた。

 DMSの展示ゾーン分けの名称にこそ従来通りの「ラピッドプロトタイピング」という表現は残るものの、出展各社のプレゼンテーションの中身は「ラピッドプロトタイピング」一色ではなくなってきている。2大3Dプリンタメーカーを例にとると、ストラタシスのブースでは展示しているモノは3Dプリンタながら、プレゼンテーションの中身はプロトタイピング事例のみならず生産寄りのテーマも含まれていた。他方の3Dシステムズのブースで配布されたカタログには、プロトタイプや試作の文字はなく、「FUTURE」とか「創造」といった未来のモノづくりを訴求する言葉が踊る。

3Dシステムズ社のパンフレットには「プロトタイプ」の表現はなく、代わりに「スイートな3Dプリンター」といったキャッチコピーが踊る
3Dシステムズ社のパンフレットには「プロトタイプ」の表現はなく、代わりに「スイートな3Dプリンター」といったキャッチコピーが踊る(クリックで拡大)

 個人的には、3Dシステムズの陶器が作れる3Dプリンター、「Cerajet」に興味を引かれた。もちろんいきなり陶器がプリントされるわけではなく、できてくるのはセラミックオブジェクトだ。これに釉薬を掛け、窯で焼いて製品にする。陶芸はハイエンドがある市場でもあるので、3Dプリンタを使用したアーティスティックな製品づくりというのは、親和性が意外とあるかもしれない。

「Cerajet」の造形サンプル
「Cerajet」の造形サンプル(クリックで拡大)

 その他のブースでも試作と少量生産の境目がゆるやかになっている印象が以前よりは強い。

 こういった様子は、3Dプリンタという言葉から連想されるイメージの広がりが、ラピッドプロトタイピングという言葉を越えた様にも見える。われわれは思った以上に言葉が持つイメージに引きずられやすい生き物だ。光造形技術と同時に生まれたラピッドプロトタイピングは、製品開発フェーズに大きな役割を果たしたが、同時にツールとしての用途を限定してしまった感もある。技術や性能はどんどん進化して、積層造型機自体は必ずしも「プロトタイピング」に用途を限定しなくてもいいものも出てきているにも関わらず。

 低価格のFDM方式の造型機の登場に、メイカーズや3Dプリンタという言葉が一般のメディアなどによって広がる状況が結びついて、プロトタイピングの枠が外れてきたというのもあるだろう。メイカーズの市場はどれほど伸びていくものなのかは読めないが、商品開発における初期アイデア段階や教育の場などでのコミュニケーションツールという用途も考えると、オフィスに置けるサイズの3Dプリンタの役割はまだ広がりそうだ。個人的には、手早くコミュニケーションツールとしての立体物を作るツールとしては、切削加工機も選択肢が充実してくればいいのにと思うが、こちらは音や削りカスのことを考えるとあまり市場性はないのかもしれない。

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