落ち着きを見せ始めた3Dプリンタブーム、DMS全体の雰囲気にも変化の兆し:プロダクトデザイナーが見たDMS2014(2/4 ページ)
今回も3Dプリンタ関連が注目を集めた「第25回設計・製造ソリューション展(DMS2014)」。ここ数年、同展示会に何となくマンネリ感を感じていたプロダクトデザイナーの林田浩一氏は、DMS2014から変化の兆しを感じたという。
「3Dプリンタで作れるもの」のイメージ
ただ一方で、ハイエンド機だろうがローエンド機だろうが、積層造型機=3Dプリンタと言ってしてしまうことへの抵抗もある。急激な言葉としての一般化とは裏腹に、3Dプリンタでどういったこと(どこまでのこと)ができるのか、できないのかという認知は、モノづくりに関わっていない人へは、さほど深くはなされていない。一般メディアからの断片的な情報のせいもあるのであろう、筆者の周りでもモノづくりに関わっていない人の中には、3Dプリンタがあれば何でも作れるという程度の認識の人もまだまだ珍しくない。
当たり前だが、そういう人たちの中にある「3Dプリンタで作れるもの」のイメージに、現状では数千万円〜億円単位のハイエンド機でないと不可能なレベルのものなのか、ローエンドの3Dプリンタでも可能なものなのかという判断基準はない。「見る見るうちに色んなものが作れるすごいものらしい」、「最近ではそれが近所の家電量販店でも買えるらしい」、という程度のものだ。そして、その「色々なもの」のイメージを聞いてみると、普通に日常生活の中で使えるものだったり、実現できたとしてもハイエンド機でなければ作れないレベルのものだったりする。
その辺りの理解が十分でない環境の中で、急速な勢いで3Dプリンタという言葉ばかりが一人歩きしている感も強い分、「反動的に一過性のはやりモノで終わってしまわなければいいが」と心配になる。とはいえ、自分に都合の良い解釈をしてしまうとか、(過度に近い)期待感を抱く人がある一定数いるということは、モノやコトを未来に進める原動力にもなるので悪いことではない。
余談・寄り道はこれくらいして、今回のDMS2014の会場では、オフィスをはじめとした、従来の加工現場以外に設置されることを想定したと思われる3Dプリンタなどの加工機に「デザインが入ってきた」と感じたのも、進化の1つかもしれない。こういった場所に置かれる機器を使用するユーザーは設計者であったり、個人クリエーターであったりで、専門職のオペレーターではなくなる。ローエンド機であれば、教育現場用として、プロではない大人どころか、子どもたちが触る可能性もあるだろう。「より低価格になりました」「より大きなサイズが造形できるようになりました」「より使い勝手が良くなりました」といった課題解決型の進化のみならず「ユーザーエクスペリエンス」という面での進化も歓迎だ。
できることが少ないけれど、その存在がより身近なものとなったローエンドの3Dプリンタや小型の切削加工機の出現は、デザイナーとしては発想ツールが1つ増えたような感覚だ。手描きのアイデアスケッチと並行して「立体スケッチ」としてのラフモデルを作る際に、従来通りの粘土や発泡ウレタンなどによるラフモデルをアナログに自分の手で作りながら考えるという選択もできれば、ある程度先にデジタルデータで作ってしまってアナログな修正も加えながら考えることもできる。こうなってくると、頭の中にあるイメージをすぐにデジタルデータとして立体化できるツールも充実して欲しい。例えば、ダッソー・システムズの「CATIA Natural Sketch」のような手描きと3Dデータをつなぐツールが低価格化・コモディティ化する方向への進化も期待したい。
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