構想設計からクラウドまで、3Dデータの一貫活用さらに広がる:DMS2014リポート【CAD/CAE編】(1/3 ページ)
「第25回 設計・製造ソリューション展(DMS2014)」では、CAD/CAEツールにおいて新技術や新製品の紹介が多く見られた。中でも注目なのは、3Dデータの多方面への活用・展開だ。
「第25回 設計・製造ソリューション展(DMS2014)」では、CAD/CAEツールにおいて新技術や新製品の紹介が見られた。中でも注目なのは、3Dデータの多方面への展開だ。
“3D”の利点は、一度データ化すれば、解析モデルや営業用データ、組み立て/メンテナンスマニュアルなど、さまざまな工程で活用・展開できる汎用性の高さにある。しかし、現状では取り扱われるデータのフォーマットもさまざまで、簡単に利用できる状況とはいえない。今回のDMS2014では、そういった“谷間”を橋渡しするような技術やツールが多く提供されていた。
また、より魅力的な製品を作るための構想設計機能やツール、データ漏えい対策として語られる仮想CADやクラウドなどの新ツール/サービスなども見ることができた。ここでは、会場の展示の中から一部をピックアップして、上流工程から順に紹介していく。
構想設計と詳細設計をつなげる
モノづくりの工程の中でも上流に当たる「構想設計」と「詳細設計」の橋渡しを強化していたのが、PTCの設計ツール群「PTC Creo」である。同社は最新バージョンの「PTC Creo 3.0」(以下、Creo 3.0)をブースで紹介していた(日本では2014年7月後半にリリース予定)。
Creo 3.0では、パラメトリックとダイレクトモデリングの連携が強化された。例えば、パラメトリックで作ったモデルをダイレクトで加工した場合、従来は、それまで付与していた設計の要件や数値的な情報が消えてしまっていたが、今回の新バージョンでは、それらを保存できるようになった。他にも、「PTC Creo Layout」と3Dツールとの連携強化などによって、構想設計と詳細設計の連続的な利用を実現。Creoの3Dと2Dツールを行き来して設計を行っていた企業に、今回の新機能を試してもらったところ、設計にかかる時間が“8分の1”にまで減少したという。
また、構想設計機能についても強化。「PTC Creo Parametric」ではダイレクトモデリング機能を、「PTC Creo Elements/Direct」では3D構想設計機能を強化し、PTC製品全体で、構想設計の支援に力を入れているようだ。
設計の現場では、複数のCADが共存するのが当たり前だ。PTC Creoでは、以前から主要な競合他社のCADデータおよび中間ファイルをインポートできたが、Creo 3.0では、他社のCADが同じマシンに入っていなければならないといった制約事項がなくなった。また、取り込んだ後のデータは、ダイレクトモデリング機能でジオメトリを変更し、フィーチャ化もできる。
概念設計ツールで新しいアイデアを生み出す
構想設計に関連したものとしては、アルテアエンジニアリングが概念設計ツールの「Inspire」を紹介していた。コンセプトデザインツールとも呼んでおり、トポロジー最適化によって、求める条件を満たした最適な形状を作り出すという。モデリングやアセンブリ機能を備え、「CATIA」など別のCADで作成した形状を取り込むこともできる。このツールのみで設計された構造を用いたマルチコプターを3Dプリンタによって出力したものが、丸紅情報システムズのブースに展示されていた。
このマルチコプターの場合、8つの同じ形のパーツを組み合わせた構造体を持っている。1つのパーツについて、押す力や支える力などを設定し、強度を保ちながらできるだけ軽くなる形状を求める。最適化には3つの方法があり、「寸法最適化」「形状最適化」「トポロジー最適化」の順に、作られる形状の自由度が大きくなる。トポロジー最適化の特徴は、形状に「穴を開けられる」ことだ。トポロジー最適化によって、材料の中抜きで重量を軽くする形状を自動で作り出せるようになったという。
Inspireの特徴は、CADとCAEを何度も行き来する通常の最適化と違い、1つのツール内で最適化が完結できる点にある。マルチコプターの場合、10分弱で形状が出てくるという。通常、同ツールでの詳細設計は難しいため、概念設計ではざっくりとした形になる。「経験を積んでいれば、どこを削ればよいかが分かるが、経験がない人でもInspireを使えばそれが分かるようになる。また、Inspireによって、従来にはなかった新しいアイデアが出せる可能性がある」(ブース説明員)という。
さらに、トポロジー最適化で注目なのは、3Dプリンタとの相性が良いことだろう。トポロジー最適化では、複雑だったり、中空だったりと、通常の製法では作れない、あるいは非常にコストの掛かる形状を設計できるため、比較的複雑なものを出力できる3Dプリンタに適している。今後、トポロジー最適化の活用が増えていけば、革新的な形が生まれ、それが製品へ応用されるケースも増えるかもしれない。
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