外国企業を狙い撃つ米国当局、製造業への高額課徴金の可能性も――PwC:製造マネジメントニュース(2/2 ページ)
PwCは「日本企業の海外での訴訟・コンプライアンスリスクへの備えと電子証拠開示への対応」をテーマに、米国の事例を中心に米国当局の規制強化の動きや、その対策について紹介した。
日本企業の対応の遅れが落とし穴に
これらの取り締まり強化の動きに加えて、日本企業を苦しめているのが、これらの取り締まりや訴訟における手続きとして必要な電子証拠開示(eディスカバリー)だ。eディスカバリーとは、米国の民事訴訟における訴訟相手や第三者による電子的証拠の開示手続きのこと。刑事案件における証拠開示も含まれる。2006年12月1日に一部改正された連邦民事訴訟規則(FRCP)において訴訟当事者が電子的証拠をどのように取り扱うかが定められた。
変更があった項目には「文書提出形式の指定」や「訴訟当事者による話し合いの義務」などがあるが、影響度が大きいのが「合理的にアクセスできないソースの情報は提出しなくてよい」という項目と「悪意なき破棄に対する制裁は加えない」という項目だ。これは逆に開示要求があった際に開示しない情報については「合理的にアクセスできない」という点を証明する必要があることを意味しており、さらに情報を開示しなかった場合や破棄した場合に「悪意がある」と判断されてしまうと制裁が科されることを意味する。
実際に前述した武田薬品工業の糖尿病治療薬「アクトス」を巡る製造物責任訴訟では、このeディスカバリーにおいて、開示要求のあった情報が破棄されていたことから証拠隠滅を疑われ、約6200億円という多額の賠償金を請求される事態に陥っている。
eディスカバリーにより開示要求されるものとしては、PCやUSBメモリ、スマートフォン、サーバ、データベース、クラウド、手帳、SNS、書類などがある。これらの膨大な情報を一定の期限内に漏れなく開示するにはそれなりの準備が必要だ。「これらの対応に日本企業は後手を踏んでいる」とPwC シニアマネージャーの池田雄一氏は指摘する。
「2006年のFRCP一部改正から準備期間を経て、欧米企業は対応を進めてきたが、日本企業は対応に遅れたケースが見て取れる。ここ最近で日本企業が多く摘発され、多額の課徴金や和解金を払うケースが多いのも、この対応がうまくいかなかったことが要因の1つだ」と池田氏は述べる。
eディスカバリー&フォレンジックセンターを設置
PwCではこれらのeディスカバリーへの対応に苦慮する日本企業を支援するために、新たに「eディスカバリー&フォレンジックセンター」を設置し2014年8月1日からサービスを開始するという。eディスカバリーを行うには、データ分析やコンピュータフォレンジックス(不正などがあった際に原因究明や捜査に必要な機器やデータを収集し証拠性を明らかにする手段や技術)などのITの領域に関連する技術と、法律や業種ごとの専門性などが必要になる。PwCでは、これらの両方の技術を持つことが強みだとしている。
PwC フォレンジックサービス部門リーダーの佐々木健仁氏は「米国や英国でビジネスを展開する製造業にとって、対応策を取らなければ今後大きなリスクとなる可能性がある。対応に悩む企業に貢献していく」と話している。
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