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現地社員を生かせない企業は成功しない――成功企業が実施する理念の共有“共進化”するアジアのモノづくり(2)(1/2 ページ)

アジア地域のモノづくりで成功するためにはどういう要素が必要かを日本能率協会が実施した調査結果を交えながら解説する本連載。2回目となる今回は、ASEANでの展開に成功する企業と失敗する企業のマネジメントの実例を紹介する。

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共進化

 アジア地域のモノづくりで成功するためにはどういう要素が必要かを日本能率協会が実施した調査結果を交えながら解説する本連載。前回の「ASEAN戦略は「点」から「面」へ――存在感増す主要拠点の現状と課題は」では、日本能率協会が2013年に実施した「ASEAN地域3カ国調査」の結果を踏まえながら、日本企業のASEAN地域へのビジネス展開の現状と課題について述べました。特に、日本企業にとっての大きな課題は、現地のニーズに応えた商品・サービスを開発することであり、その前提として、経営理念の浸透、経営の現地化の促進、そして現地社員の育成が、必要だということを解説しました。

 それではどのようにして、現地の力を生かし現地市場のニーズにあった事業展開を行っていけばよいのでしょうか。今回は現地で奮闘する日本人マネジャーから伺った体験談や、成功企業の事例をもとに、掘り下げたいと思います。



「ホウ・レン・ソウ(報告・連絡・相談)が通じない」

 筆者がタイ駐在の日本人マネジャーに、現地でのマネジメントにおける課題や悩みについてインタビューをしたところ、何人かに共通しているのが「ホウ・レン・ソウ(報告・連絡・相談)が通じない」です。

  • 「業務を指示しても、いつまでたってもアウトプットが出てこない」
  • 「大丈夫、大丈夫と言っていたのに、頼んだ資料と全然違うものが出来上がってきた」

 アジアに赴任した経験のある人はよく感じることではないでしょうか。日本では上司と部下のコミュニケーションの基本となっている「報告・連絡・相談」、いわゆる「ホウ・レン・ソウ」がタイ人の部下との間ではなかなか通用しません。この点で困っている日本人マネジャーが多いようです。ただ、これはタイだけではなく、他の多くのASEAN諸国でも耳にする話です。

 このようなコミュニケーションのギャップが生じる背景には文化や習慣の違いがあります。しかし、本当にそれだけでしょうか。もう一度よく考えてみてください。

 日本人マネジャーも赴任直後はタイ人社員を何とか理解しようと頑張っていたはずです。それがなかなか上手くいかないうちに、自分でやった方が早いということで、結果として任せられなくなってしまう……。こんなジレンマに陥ってしまっているケースが多いように見えます。

 一方で、タイ人社員にも言い分があるようです。筆者が所属する日本能率協会のグループ会社である日本能率協会コンサルティングのタイ法人(JMACタイ)が、現地日系企業にインタビュー調査を行ったところ、以下のようなタイ人社員の声を耳にしたそうです。

  • 「日本人の上司は仕事の目的を言わず、いつも作業をオーダーしてくるだけだ」
  • 「指示通りにやったのに、怒られた」
  • 「アウトプットが計画と少しくらい違ったって、大きな問題ではないのに」
  • 「日本人はOJTが大切と言いながら、教えてくれない」
  • 「どうせ日本人の上司は5年で変わってしまう」

 日本企業が現地市場のニーズに応えた事業展開をしていくためには、現地の社員の力を生かすことが不可欠なのは言うまでもありません。そのためにも、このようなコミュニケーションのギャップを乗り越えるマネジメントを実践していくことが求められています。では、どのように“上手なマネジメント”を行っていけばいいのでしょうか。

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