PTC、「Creo 3.0」発表――CATIAやNX、SolidWorksのデータがネイティブで扱える:CADニュース
米国PTCは、同社の設計ソフト「Creo」の新版「バージョン3.0」を発表した。新技術「Unite Technology」を搭載したことで競合する主要CADベンダーのデータをネイティブで扱えるようになった他、スケッチなど構想設計段階と3次元CADとの親和性を高め、より革新的な設計に貢献できるようにした。
米PTCは2014年6月16日(米国時間)、開催中のユーザーイベント「PTC Live Global」において、設計ソフト「PTC Creo」(以下、Creo)の最新版である「バージョン3.0」を発表した(関連記事:IoTがもたらす“月の陰”でもつながる価値――「戦略転換が必要」とPTC CEO)。新バージョンは、新たに競合CADベンダーのCADファイルをそのまま読み込んで扱える「マルチCAD機能」を強化した他、革新的な形状を試行するために「構想設計からの連携機能」を強化していることが特徴となる。
PTC CADセグメント担当上級副社長のマイケル・キャンベル(Michael Campbell)氏は、「Creo 3.0」について3つのポイントがあると強調する。「1つは『Unite Technology』によるマルチCAD対応、2つ目が構想設計機能の強化による『Empowering Innovation』、そして3つ目が、主要機能の効率化による『Core Productivity』だ」(キャンベル氏)。
Unite TechnologyでマルチCAD対応
今回の機能で特に大きな変化が、Unite TechnologyによるマルチCAD対応だ。一般的にCADデータは、作成したCADソフトでしか利用できず、他のCADソフトで利用するためにはフォーマットの変更が必要になる。そのため大規模なCADデータを別のCADソフトで利用するためには、フォーマット変換に多くの時間が取られ、設計者の作業効率の悪化を招いていた。
Unite Technologyは、Creo以外で作成したCADデータやフォーマットをCreoで使えるようにする技術だ。まず、フランスのDassault Systemesの「CATIA」と「SolidWorks」、米国シーメンスPLMソフトウェアの「NX」と「SolidEdge」、米国Autodeskの「Inventor」の5つのフォーマットについては、インポートできる。「CATIA」「SolidWorks」「NX」については、そのままファイルを「開く」ことも可能。さらに拡張機能を使えば、Creoで変更した点などをそれぞれのフォーマットでエクスポートできる他、自動更新なども可能だという。
キャンベル氏は「Unite Technologyにより、ネイティブファイルがそのまま開けるため、必要な部分だけを変換することができる。企業全体として大幅な工数、コストの低減につなげられる。また、複数のCADフォーマットを利用した協業が必要な場合でも、Creoと他CADデータとの間で設計意図を保持できる」と説明。一方でその他のフォーマットへの対応については「市場の要望がそれほどないため現在計画はない。ただCreo Elements/Directについては別の戦略を考えている」と話している。
「Creo 3.0」の画面イメージ。さまざまな中間ファイル(STEP、IGES、DXFなど)をインポートできる他、CATIA、SolidWorks、NXのファイルを直接インポートや“開く”ことができるようになった。拡張機能を使うと、他CADと連携できるようになるだけではなく、変更を自動で受け取り更新できる(クリックで拡大)
構想設計での作業内容を有効活用
また、製造業にイノベーションが求められる中、構想設計段階のアイデアを有効活用する機能を強化。「Creo Parametric」に含まれるAlign Freestyleデザイン機能でデザイナーが自由に作成したデザインを、パラメトリックで作成することが可能。また、「Creo Layout」の拡張性と機能強化により、2次元の構想設計とそのデータを3次元パラメトリック環境で再利用することができる。さらに、3次元のダイレクトモデリングアプリケーションの機能と操作性も向上しており、これらもパラメトリックの詳細設計現場で活用しやすくした。キャンベル氏は「設計の初期段階のアイデアをそのまま詳細設計に活用できる。新しいコンセプトやデザインを早く形にできるメリットがある」と話す。
その他、日々の設計業務の負担を軽減し、作業を効率化する機能を強化。部品ライブラリやファスナー組み付けフローの自動化を実現した他、新規ユーザー向けを含むヘルプシステムの充実を図るなど、使い勝手を高めている。
Creo 3.0の各機能のリリーススケジュールは以下の通りだ。
Creoのクラウド対応は今後検討中
今後のCreoの機能強化について、キャンベル氏は「Creo 4.0ではモデルベース開発に関連する機能を強化していくだろう。短期的な焦点として3Dプリンタに関連する機能も強化ポイントだ。また全社的に買収したThingWorxのIoT関連の知見をどう取り込んでいくのかは大きなテーマとなっている」と語る。
さらにクラウド版Creoの投入については「現状ではいつ商用発売するかは決まっていない。まずはトライアル版を投入し、反応を見る。その次にアカデミック版を出し、最終的に商用モデルの投入を考える」(キャンベル氏)としている。
関連記事
- バンダイも使うパラメトリック/ダイレクト連携ツール
PTCの設計ツールの新製品 Creo2.0は、2次元構想設計機能や、パラメトリック/ダイレクト連携を強化した。バンダイの玩具開発にも採用された。 - IoTがもたらす“月の陰”でもつながる価値――「戦略転換が必要」とPTC社長
米PTCはユーザーカンファレンス「PTC Live Global 2014」を開催。基調講演に立ったPTC社長兼CEOのヘプルマン氏は、製品の形が“スマートコネクテッドプロダクツ”となることにより、IoT(Internet of Things)やサービス化が進み、製造業の形が大きく変わることを訴えた。 - PTCのダイレクトモデリングのツール、2手に分かれる
Creoでは、ダイレクトモデリングのツールが2手に分かれた。旧CoCreateユーザー、まったく新しいユーザー、両方のニーズに配慮された。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.