デンソーがスパークプラグを改良、混合気を誘導する板で安定燃焼を実現:人とくるまのテクノロジー展2014
デンソーは、「人とくるまのテクノロジー展2014」において、開発中の「気流誘導高着火スパークプラグ」を展示した。EGRシステムなどの導入でエンジン気筒内の混合気の流速が高速化しても、安定した燃焼が行えるような工夫を加えた。
デンソーは、「人とくるまのテクノロジー展2014」(2014年5月21〜23日、パシフィコ横浜)において、開発中の「気流誘導高着火スパークプラグ」を展示した。
スパークプラグは、中心電極から接地電極に向かって出る放電火花を使って、吸気と燃料を混ぜた混合気を着火させるエンジン部品である(関連記事:すごいぞスパークプラグ、2000℃に加熱してから急冷して高圧を掛けても壊れない)。
現在、燃費向上が常に求められるガソリンエンジンは、排気ガスを再循環させるEGRシステムやリーン燃焼によって、エンジン気筒内の流速が高速化する傾向にある。もちろん、スパークプラグの放電部に流れ込む混合気も高速になる。この場合に問題になるのが、混合気の流入方向に対する、中心電極を外側から回り込むように作り込まれている接地電極の位置である。混合気が流入を邪魔するような位置に接地電極があると、混合気の流れが阻害されて中心電極の周辺によどみが発生してしまい、着火性が低下してしまうのだ。
しかし、スパークプラグはエンジンの気筒内にねじ止めして組み付ける部品である。接地電極が混合気の流入を邪魔する位置にこないようにするのは極めて難しい。
気流誘導高着火スパークプラグは、この問題を解決するために開発された製品だ。接地電極の隣に誘導板を追加することにより、接地電極がどの位置にあったとしても、混合気を中心電極の周辺に誘導できるという。同社の説明員は、「誘導板を持たないスパークプラグの場合、混合気の流速が速い条件下の燃焼変動率は最大で7.5%あった。燃焼変動率が大きいとエンジン内での燃焼が安定しないので、燃費低下につながってしまう。これに対して気流誘導高着火スパークプラグを使えば、同じ条件下で燃焼変動率を4.4%まで改善できる。2016〜2017年ごろまでに製品化したい」と述べている。
「気流誘導高着火スパークプラグ」の評価結果。グラフの横軸は、混合気の流入方向に対する接地電極の角度。0度の場合に、混合気の気流を遮る位置に接地電極がくる。縦軸は燃焼変動率である(クリックで拡大) 出典:デンソー
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