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イノベーションを生む「デザインマネジメント」の力とは【前編】製造マネジメントインタビュー(2/3 ページ)

「デザインが経営を革新する」というと、少し大げさだと思うだろうか。しかし、実際に「デザイン」を基軸にして新たな視座に立つことにより、多くの事業革新につながるケースがあるという。「デザインマネジメント」を切り口に多くの企業の事業革新に携わるエムテド 代表取締役の田子學氏に話を聞いた。

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「デザインマネジメント」はモノづくりに何をもたらすか

MONOist なぜ今「デザインマネジメント」に注目が集まっているのでしょうか。

田子氏 情報のスピードに連動して消費行動が速くなり、あらゆる業界で新しい価値の創造が加速度的に求められるようになっている。「クリエイティブであること」は「前進すること」を意味する。だから「デザイン」は既存の価値を飛躍させる原動力にすることができるし、今までにない価値を創ることに適している。技術主導ではなく、デザインとの協業によって要素をそしゃくし再構築することで、イノベーションに至る可能性は広がる。そういう部分が注目され始めたのではないか。

 例えば、社会学者のリチャード・フロリダ(Richard Florida)氏※)も語っているが、経済の中心を担う階層が変わってきているのだと思う。一昔前の情報化時代にはナレッジワーカーと呼ばれる人々が左脳的思考によって情報や知識で経済をけん引していた。その後、世の中がモノで豊かになると、次の価値を作るのは右脳的思考を得意とするクリエイターだといわれている。大量生産時代の終焉(しゅうえん)後、MBAのような効率を重視するマネジメントが注目された。しかし、その視点だけでは新たな価値を生み出すことは難しいと多くの人が気づいたのだろう。

※)米国の社会学者。新たな経済階級である「クリエイティブ・クラス」について提唱した。著書に「クリエイティブ資本論」「クリエイティブ都市論」などがある。

 一方で日本企業はどうか、と振り返ってみると、自前主義のハードウェア指向に偏っている。ハードウェアを生かすソフトウェアを同じウェイトで考えていない。さらに、製品の企画から販売まで一貫したディレクションを行っているかというとそれもない。それぞれの事業部であったり、部門だったりの思惑で物事を判断しているし、競合は社内に存在しているなんてこともしばしばだ。それがあらゆる局面で日本が後手に回ってしまう要因なのだと思う。

デザインマネジメントで成功したリアルフリートの経験

MONOist そもそものきっかけとして、なぜ「デザインマネジメント」に取り組もうと考えたのですか。

田子氏 発端は大学でデザインマネジメントを学んだことだが、自身の中では「amadana(アマダナ)」ブランドを展開するリアル・フリート※)での活動で成果を残せたことが、大きな引き金となっている。

※)リアルフリート:デザイン家電企業。元東芝の熊本浩志氏が2002年に創業。「アマダナ」ブランドの特徴的なデザイン家電を展開(関連記事:“amadanaケータイ”限定モデル、わずか2日で売り切れ

amadana
amadanaの携帯電話端末「N705i」(出典:リアル・フリート)

 大学卒業後、東芝 デザインセンターに就職した。そこでは企画部から「こういう企画でこういう狙い」というようなコンセプトが降りてきて、それにそって製品のデザインをするのが常だった。ところがある時、言われたことをやるだけでなく、企画段階から参加したくなって会議に参加した。すると、お互いの話が新鮮で、それまで意識しなかったシナジーの可能性を感じることができた。しかし、プロモーションや販売の部分には参画することは許されなかった。こういう経験の中で「自分たちが製品に込めた本当の気持ちはしっかり最終顧客に届いているのか」という疑問を抱くようになった。

 それから、デザインマネジメントによる新たなモノづくり手法などの提案を意識的に進めるようになった。同じ頃、社内で熊本浩志氏(後のリアル・フリート創業者)に出会ったことも大きなきっかけだ。そして東芝からリアル・フリートに転職、いよいよデザインマネジメントを実践することになった。リアル・フリートで面白かったことといえば、当時はスタッフ5人くらいのベンチャーの一挙手一投足に大手メーカーが反応したことだ。それは大手企業が「新しい市場を作ること」や「新しいモノづくりを実現すること」に大きな壁を感じていたことであったのだと思う。

 そのような仕事を経て独立企業。今は日本の産業において「デザインマネジメント」を提供するべく、さまざまな業界のプロジェクトに取り組んでいる状況だ。

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