「海外赴任イヤです!」止まらぬビジネスのグローバル化、新人のドメスティック化:製造マネジメントニュース
企業と新入社員の思惑の隔たりは広がっているようだ。日本能率協会の2014年度入社新入社員への意識調査によると「海外赴任はしたくない」と回答した新入社員の比率は57.7%となり、2年連続の増加となった。
日本能率協会(JMA)は2014年4月17日、2014年度の新入社員意識調査の結果を発表した。「海外赴任をしたくない」という新入社員の比率は57.7%となり、過半数となった。製造業にとってビジネスのグローバル化は既に避けては通れないものになっているが、新入社員は国内志向を強めており、ギャップが広がる調査結果となった。
同調査は、同協会が提供する新入社員向けセミナーの参加者を対象に「会社や社会に対し、どのような意識や価値観を持っているか」の調査を行う毎年恒例のもの。今回は、2014年3月27日〜4月8日の期間で調査を実施し、新入社員1039人が回答している。
グローバル化を「ビジネスの好機」と捉えるも「海外赴任はしたくない」
その調査の中で、グローバル化を「日本企業にとってビジネスの好機」と回答した新入社員が75.3%、「自分も当事者である」と当事者意識を持つ新入社員が78.2%となるなど、グローバル化に向けた高い意識をうかがわせた(図1)。
一方で「海外赴任」については、「海外赴任はしたくない」人が57.7%と過半数を占め2年連続で増加した。この数値は過去4年間では最高のものだ。さらに「あなたがこれから働くにあたって、できればやりたくないこと」の2位にも「海外への転勤」とした回答が42.8%の2位となり、国内志向は従来以上に高まっている傾向がうかがえる。
「海外赴任をしたくない理由」としては、「治安や食生活、衛生面で不安を感じるから」が54.5%で1位。続いて「言葉が通じるか不安だから」(52.0%)、「日本が好きだから」(39.3%)「家族や友人、恋人と離ればなれになってしまうから」(38.5%)「現地の人とうまく仕事がやっていけるか不安だから」(26.2%)「日本でしかできない趣味や社外活動などがあるから」(13.8%)「結婚するのが遅くなりそうだから」(7.5%)となっている。
今回の調査では「海外(在住)経験の有無」でのソートも行っており、海外経験のある人は「海外赴任したい」が61.2%となったのに対し、海外経験がない人は「海外赴任したい」が22.4%と顕著な違いが生まれている。
アベノミクス効果で国内回帰の動きは少しは出つつあるものの、日本の製造業にとってグローバル化は最近の大きなテーマとなっており、海外投資の強化は必須事項となっている。
新入社員の傾向について、日本能率協会 経営・人材センター マネジャー 海老原紀枝氏は「グローバルな企業活動を肯定しているものの、海外赴任に抵抗を感じている新入社員が多いという結果が見える。海外経験のある人が海外赴任の抵抗感が少ないことからも早期の海外経験を作りハードルを下げることなどが有効だと考えられる。またメンタルケアなども重要になるだろう」と話している。
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