口ベタな人こそ身に付けたいコーチング【その2】:レイコ先生の「明日から使える! コミュニケーションスキル」(2)(1/3 ページ)
「部下のモチベーションが下がってきた」「部下から話しかけてくる回数がだんだん減ってきた」「褒めているのに、部下があまり喜んでいない」――思い当たる人はぜひご一読を。
本連載の登場人物
小山田和成(オヤマダカズナリ)
中小ソフトウェアメーカーに勤務するエンジニア。入社8年目の30歳。技術力においては社内から一目置かれる存在で今年から係長に昇格。しかし、奥手な性格でコミュニケーションは苦手。通称「カズ君」。
杉本麗子(スギモト レイコ)
外資系ソフトウェアメーカーにて人事部長を歴任。その後、中小企業診断士を取得して独立。現在は、「ツンデレ」キャラを生かして売れっ子の人事コンサルタントとして活躍中。通称「レイコ先生」。
*編集部注:本記事はフィクションです。実在の人物団体などとは一切関係ありません。
あら、カズ君、なんだか浮かない顔をしているわね。コーチングは、その後活用できているかしら?
レイコ先生。最初は教えてもらったコーチングのスキルをうまく活用できていたのですが、最近は新入社員とのコミュニケーションがうまくいっていないように感じています……。
どんな点がうまくいっていないのかしら?
えーとですね。うまくいっていないのはこんな点です。
- 新入社員のモチベーションが下がっているように感じる
- 新入社員から話しかけてくる回数が最近減った
- 成果を褒めても、最近はあまり喜んでいないように感じる
なるほどね。やっぱりそうなると思ったわ。これらはコーチングでよくあること。“コーチングあるある”なのよ!
え! そうなんですか。この前一緒に教えてくれればよかったのに……。
オダマリ!! カズ君が、最後まで話を聞かないからいけないんでしょ!!
ヒィーーーッ!!
まあ、いいわ。これから、コーチングを実践する上でありがちな失敗例とその対応方法を教えてあげるわね。
部下のモチベーションが下がってきた
「質問」はコーチングの基本となるスキルだと前回の記事で解説しました。拡大質問や未来質問、肯定質問について学んだ後は、「どんな質問をしようかと」一生懸命考えることでしょう。しかし、この一生懸命さが間違った方向にいってしまうと「部下のモチベーションが下がってしまう」という事態につながります。
間違った方向というのは「良い質問をして自分が部下を引っ張っていかなければならない」という思い込みです。具体例として、以下の会話を見てみましょう。
この会話が終わった後、上司と部下はそれぞれどのような気持ちだったでしょうか? 恐らく上司は「1」の段階で「やる気がないな〜。まだまだ考えが足りないな」と感じたはずです。一方で、部下は「2」の段階で「長所が分からないから困っているんだよ」という不満を感じたでしょう。
このような事態になってしまう要因は、上司が終始会話を「リード」してしまっているためです。上述したように「良い質問をして自分が部下を引っ張っていかなければならない」という思いが、「質問」を「提案」へと変えてしまっているのです。「商品開発が向いている」「技術サポートが向いている」という発言からも分かるように、上司が自分で「答え」を用意して、それを提案してしまっています。
前回の記事でコーチングの基本となる考え方として「その人が必要とする答えは、全てその人の中にある」ということを書きました。この考え方を忘れて質問のスキルを活用しようとしても、上記のようにうまくいかないのです。上司は「いろいろ質問(提案)しているのに、部下は何にも考えていないなぁ」と感じ、部下は「結局、上司は自分の考えを押し付けているだけだ」と感じるようになり、両者にとって良くない方向へと向かってしまうのです。
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