見えてきた新型「コペン」のカタチ:車両デザイン(3/3 ページ)
2014年6月の発売が決定したダイハツ工業の新型「コペン」。同年3月末の技術説明会に参加したプロダクトデザイナーの林田浩一氏に、注目を集める新型コペンが、どのような車両に仕上がるのかを分析してもらった。
新型「コペン」を見ていて思い浮かんだクルマ
作り手の思いも分かるけれど、個人的には「そんなに“スポーツカー”と連呼しなくてもいいクルマなのではないかなぁ」というのが、東京モーターショー2013の時から新型コペンを見ていて何となく感じているところでもある。「気軽に乗れる小さなオープンカーだけど、走らせてみると案外すごいよ」くらいの印象の見せ方でもいいのではないか。走りの性能を楽しむだけでなく、肩の力を抜いて楽しめる気軽さの訴求の方がコペンの世界感に合ってるような印象。あくまで個人的な印象ではあるけれど。
新型コペンを見ていて、ふと頭に浮かんだ小さなオープンカーがあった。それはRenault(ルノー)の「ウインド」。新型コペンがミラ イースをベースに作られたのと同様に、日本の軽自動車よりほんの少し大きな「トゥインゴ」をベースに作られたクルマだ。
ウインドの持つ、スポーティーな雰囲気もありつつどこか力の抜けた感じは、コペンに合いそうだと感じたのが思い浮かんだ理由。そう思って、ウインドの発売時のプレスリリースをあらためて読んでみると、そこにあったタイトルは、「OPEN&PLAY 自由を楽しむクーペロードスター」。
新型コペンも“軽スポーツカー”といった、クルマそのものを語る言葉だけではなく、ユーザーのライフスタイルとDRESS FORMATIONを結び付けるような言葉があると、もっとしっくりくるのかもしれない。
今回のイベントはあくまで技術説明会。新型コペンの本当のカタチは6月の発表会までのお楽しみとしよう。
楽しみなのは「コペン」から始まる、新しいこと
ショーカーのKOPENから変わらず、骨格+樹脂外板という構造を貫いて市販化するというところからは、「今まで通りのモデルチェンジではNG」という意気込みなり危機感なりの本気度を感じるし、行動の象徴としての役割も果たしている。
同時に、実験的な新たな試みのためにも、少量生産ながらキャラクターのはっきりした製品を持つことは、企業が絶えず進化していく上で必要だとあらためて感じる。モーターショーのコンセプトカーにもそういった役割はあるが、作るだけでなく商品として売ることによる評価や支持は、モーターショー会場のターンテーブル上で回っているものからは得られない。
骨格+樹脂外販を成立させるために内部学習を重ね、その成長の中から、新たな価値提案のための業務プロセスが生まれ、顧客へ提供される。それが顧客の共感を呼び顧客ロイヤルティーが高まれば、回り回って企業収益につながる。バランススコアカード(BSC)とかマネジメントツールのテキストみたいだが、新型コペンは新たなモノづくりへのコミュニケーションツールとしての役割も大きい。
さて以前の記事でも書いたが、東京モーターショー2013の会場リポート(関連記事:トヨタの分かりにくさ、BMWの分かりやすさ)やデザイン統括担当者へのインタビュー(関連記事:「KOPEN」はモノづくりの新しい仕組みのアイコンとなるのか(前編))から感じているように新型コペンは新たなモノづくりのアイコンになっていくのだろうか。6月の正式発売時には、新たなビジネスモデルも含め発表されるという。楽しみはそこからである。
Profile
林田浩一(はやしだ こういち)
デザインディレクター/プロダクトデザイナー。自動車メーカーでのデザイナー、コンサルティング会社でのマーケティングコンサルタントなどを経て、2005年よりデザイナーとしてのモノづくり、企業がデザインを使いこなす視点からの商品開発、事業戦略支援、新規事業開発支援などの領域で活動中。ときにはデザイナーだったり、ときはコンサルタントだったり……基本的に黒子。2010年には異能のコンサルティング集団アンサー・コンサルティングLLPの設立とともに参画。最近は中小企業が受託開発から自社オリジナル商品を自主開発していく、新規事業立上げ支援の業務なども増えている。ウェブサイト/ブログ、誠ブログ「デザイン、マーケティング、ブランドと“ナントカ”は使いよう。」などでも情報を発信中。
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