見えてきた新型「コペン」のカタチ:車両デザイン(2/3 ページ)
2014年6月の発売が決定したダイハツ工業の新型「コペン」。同年3月末の技術説明会に参加したプロダクトデザイナーの林田浩一氏に、注目を集める新型コペンが、どのような車両に仕上がるのかを分析してもらった。
外板の材質である樹脂に目を向ける
外板の材質である樹脂に目を向けると、初代コペンと比べてどれほど軽量化されているかも気になるところだ。しかし、初代コペンも軽量化がテーマになっており、ボンネットやルーフ、トランクといった部位はアルミニウム製だった。このため、新型コペンが樹脂外板になったからといって劇的な軽量化を図れたわけではないようだ。
樹脂外板の材質は部位ごとに使い分けている。フロントフード(アウター)、前後フェンダー、前後バンパー、ロッカー、フューエルリッドはPP(ポリプロピレン)、フロントフード(インナー)、ラゲージ、ルーフ、バックパネルをSMC(シートモールディングコンパウンド)を用いている。
金属プレスよる外板と樹脂外板の生産面での比較も興味深い。ボディ外板を金属プレスで作る場合、何段階かのプロセスに分けてプレスを行い、フェンダーなどの外板に仕上げて行くのが一般的だ。これに対し樹脂外板は、基本的には成型機から出てきた時点で部品ができているという事実は、金属プレスとの工程上の大きな差になる。今回、広範囲に渡って樹脂外板を取り入れた新型コペンは、将来的なクルマの作り方、売り方、エンドユーザーやサードパーティーとの関わり方といった事業戦略を含む面でも、実験的な要素が大きいことは想像に難くない。
筆者自身の興味の強さもあり、話が新型コペンより周辺のことに飛びがちではあるが、クルマそのものはどうだろう? 持ち込まれていた試作車は外装にカモフラージュのラッピングが施されており、デザインの全容は6月の発売までおあずけとなっている。
しかしラッピング越しに見えるクルマのシルエットからは、ショーカーと比べて大きなデザイン変更がなさそうなことが窺い知れる。
初代コペンとボディサイズはほぼ同じということだが、サイドから見ると全高の中でのベルトライン位置が初代より高めなので、ボディの厚みが初代コペンより強く感じられる。前後のホイールアーチからボンネットやトランクまでの厚みも初代と比べると厚みを感じさせるものとなっていて、これが「しっかり感/重厚感がより増して歓迎」となるか、あるいは「軽快感が減って残念」となるか、見る人の好みによっても印象が分かれるところかもしれない。
新型コペンにとって、初代コペンが登場したころとは異なる事情もある。現在のクルマは、フロントフード部に対して歩行者保護対応を求められるようになっている。もし衝突事故により歩行者がフロントフードにぶつかった場合、その衝撃を和らげられるようにボンネットとエンジンの間により広い空間を確保せねばならず、このことがデザインにも影響を与えてしまうのだ。
スポーツカーらしく低いフロントフードのスタイリングを採用しようとすると、エンジンを低い位置に搭載できるアンダーフロアを専用で用意するとか、歩行者の衝突の瞬間を関知してボンネットを持ち上げてエンジンとの間の空間を確保するようなシステムが必要であり、当然それにはコストが掛かる。
新型コペンの場合はというと、アンダーフロアをミラ イースと共用しているので、エンジン搭載位置の高さは同じ。しかし、全高が1490mmあるミラ イースから、新型コペンの全高は215mm低くなって1275mmになっている。全高を低くする分フードの高さも低くしたいが、エンジン搭載位置の高さが同じ以上、歩行者保護性能を確保しつつ下げられる限界が出てくる。ボンネットの“付け根”位置であるフロントウインドウ下のカウル部分で比較すると、ミラ イースに対して約80mmというのが下げられる限界とのことだった。
初代より少しボディが分厚くなって、丸みのあるカタチから路線を変えてきた新型コペンは、既存オーナーからはどう評価されるだろうか。着せ替えができるDRESS FORMATIONだけでなく、初代より走りの面でも大きく磨き上げたということもアピールポイントだからであろう、スポーツカーという表現が初代より強く感じる。
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