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海外法人の“羅針盤のない航海”を解消――北川工業製造IT導入事例(2/2 ページ)

グローバル化に積極的に取り組み、海外現地法人の設立などを続けてきた部品メーカーの北川工業。しかし“現地任せ”の経営であったことから「締めてみなければ黒字か赤字か分からない」状況が続いていたという。真のグローバル化を目指し、全拠点“見える化”を図った同社の取り組みを紹介する。

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“抵抗勢力”から“旗振り役”へ

 ERP導入プロジェクトは2009年3月に開始した。しかし、基幹システムの統合に全ての現地法人が協力的だったわけではない。前述した各地の拠点長に任せるという方針のもと、現地法人はそれぞれが自分たちにとって使いやすいシステムを使用しており、グローバルの統合システムを活用することが、日常業務の効率低下につながるからだ。各法人の責任者は売上高や利益などを責任数値として抱えていることからシステム統合により“不便”になることが、リスクと考えられてしまうという形だ。

 北川氏は「円滑に導入が進んだ拠点もあったが、思ったように進まない現地法人は幾つもあった。本社は本社、現地は現地の理屈で話をしており、話が通じ合わない場面があちこちで見られた」と当時の苦労を振り返る。

 事態が好転したのは、現地法人経験者のプロジェクトリーダーを起用してからだ。起用された営業推進室 室長の天本哲雄氏は、今回のプロジェクトが開始した2009年当時はまだ中国・上海の現地法人の責任者で、本社の大号令を現地の立場で聞いていたという。

天本氏
北川工業 営業推進室 室長の天本哲雄氏

 中国はもともとビジネスモデルや税制が特殊でグローバルシステムでは難しいケースも多い。そのため上海の現地法人では、現地で使いやすい手組みのシステムと会計パッケージを組み合わせて活用していた。天本氏は「せっかく苦労して完璧に機能するシステムを構築したのに本社は何を考えているんだ、と不満に思っていた」と語る。

 しかし、日本に戻りERP導入プロジェクトのリーダーとなったことで立場が180度入れ替わる。「“抵抗勢力”から“旗振り役”へと入れ替わったことで最初は戸惑った。しかし現地法人からプロジェクトに入ったことで、日本サイドの事情、現地サイドの事情を理解しつつプロジェクトを進められるようになった。それにより、お互いの妥協点を見出しつつ、プロジェクトを前に進められるようになった」と天本氏は当時の状況を話す。

 実際に天本氏がプロジェクトリーダーになってから、多くのポイントで折り合いがついていったという。

 例えば、プロジェクト発足当初は本社サイドは全現地法人に無条件に同じ基幹システムを導入しようとしていた。しかし、商習慣、会計制度、税制度などが複雑な現地法人では、日常業務や入力作業の煩雑さが大幅に増えることを本社経営陣に説明。最終的には既存の基幹システムと新システムを連携させる形(インタフェース方式)も可としたことで、統合システムとして機能するような形で折り合うことができたケースもあった。

柔軟性を持つA.S.I.Aを導入

 今回グローバル統合の基幹システムとして採用したパッケージシステムは東洋ビジネスエンジニアリング(B-EN-G)の「A.S.I.A」だ。もともとはアジアで豊富な導入実績を持つ国産パッケージということで、タイの現地法人への導入があったことがきっかけとなり、本導入が進んだ。ただ、当初想定していた以上に「ローカルシステムとの柔軟な連携」という点が効果を発揮したという。

 「台湾と上海は現地の既存システムを使い、インタフェースだけ共通化した設計となっている。その他、欧州はいくつかの理由で1拠点だけバージョンが異なるものを使っている。パッケージとして多くの地域の会計状況などに対応する機能を持つ一方で、他のシステムとの柔軟な連携をできる点が大きかった」と北川氏はA.S.I.Aを評価している。

システムイメージ図
新基幹システムのイメージ図(クリックで拡大)

真の“見える化”は2015年春

 基幹システムの導入プロジェクトは現在も進行中だ。海外法人への導入は2014年3月で終了する予定だが、日本側のシステム導入が完了するのは2015年4月になるという。「現在はようやく海外の数字がリアルタイムで見えるようになった状況。日本も含めた統合システムが完了すれば、いよいよ“羅針盤のある航海”ができるようになる」と北川氏は新たな航海に思いをはせている。

北川氏(右)と天本氏(左)
IT基盤導入を推進する北川氏(右)と天本氏(左)


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