試作4号EV「SIM-HAL」はシムドライブの集大成、今後は実用化フェーズへ:電気自動車(2/2 ページ)
電気自動車(EV)ベンチャーのSIM-Drive(シムドライブ)は、試作EVの4号車「SIM-HAL(シム・ハル)」を発表。これまでの先行開発車での技術成果や経験を生かし、走行距離をはじめとするEVの課題をクリアした。今後は「EV実用化」に向けた開発に本格的に乗り出す。
4種類のインホイールモーターを開発
EVの実用化に向けて、同社が基幹技術の1つとして開発に注力しているのがインホイールモーターである。SIM-HALには、新規開発した軽量で高性能の「SS(Super SIM-Drive)」を搭載している。最高出力は65kW、最大トルクは620Nmである。重さも33kgと、SIM-CELのものと比べて約35%の軽量化を図った。さらに低い電流密度でも、高いトルク密度を発揮できるようにした。JC08モードの燃費測定で用いられるような実用負荷域での効率を、SIM-CELのモーターより改善しているのも特徴。これまでのインホイールモーターで課題となっていたコギング(脈動)トルクについては、ほぼ確認できないレベルまで低減できたという。
SIM-HALに搭載したSSの他にも、3種類のインホイールモーターを開発した。SSの積み層を2倍にして最高出力を高め、レーシングカーへの対応も可能とした「SSX」、インホイールモーターとともにドラムブレーキもタイヤ内部に収められる「SP」、エンジンルーム内に水平に実装でき、増速機構も内装した垂直軸方向のモーター「UFX」である。田嶋氏は、「当社では、インホイールモーターの開発/試作は行うが量産はしない。コスト低減を実現していくには、量産技術を持つ企業と協業する必要がある」と語る。
これらのインホイールモーターの特徴を生かし、運動性能を向上させるのが独自の4輪独立制御技術である。舵角センサーと角速度センサーからのデータを基に、実車両の挙動と運動モデルを比較して、理想的な動きになるようにトルクの配分を行う。これによって、安全で安定した走行が可能になるという。
シムドライブは、車両に関する技術以外でも、「SIM-iACT」構想と呼ぶEV普及に向けたサービスを提案している。リコーや積水化学工業、沖電気工業、アルパインなどのパートナー企業と連携し、インターネットを介してバッテリー関連を含めた車両情報を有効活用できるような仕組みとなる。EV利用者の利便性向上と不安解消を狙いとするサービスである。
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