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タダって思ったよりも高い!? 無償&廉価3Dツールとの付き合い方3次元って、面白っ! 〜操さんの3次元CAD考〜(32)(2/2 ページ)

専門家ではなくても手が届きやすいデジタルツールである、無償3次元CADや個人向け3Dプリンタだが、やはり「無償」や「廉価」であるのには理由がある。次々と起こる問題を自力で解決できないと、使いこなせないかも。

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ダブルバイト特有のエラー

 しかし「質問はあるのに、回答が見つからない……」ということも少なくはありません。そういう時は自分で模索する必要があります。また、忘れてはならないのは、日本語の環境はダブルバイト(全角)である、ということです。つまり、シングルバイトだけでソフトを使っている人たちは遭遇しない問題もあります。そういう場合には、いくらフォーラム内の情報を見てもめぼしい情報が見つからないかもしれません。

 さて、前ページ図1で紹介した私の問題は、おかげさまで、無事に解決できたのですが……。私以外にもWindows8で123D Designを使っている人たちはいるはずですし、本来正常に動くはずの環境だったのに、一体、どこかが違っていたのか。

 解決方法は次のトラブル発生で気が付くことになりました。それが、これ。「Fusion 360」でした(図4)。


図4 Fusion360起動時のエラー画面

 これまた、Fusion 360が一応は立ち上がりかけたものの「ロードできない」メッセージが一気に。で、そのファイルパスを見てみると、日本語の文字が。まぎれもなく、私の名前で、私のホームディレクトリですね。

 そういえば、このPCのセットアップをした時に、Microsoftアカウントを使いました。で、そのアカウントの名前を入れるときに、例に従って普通に漢字で「水野操」とフルネームを入れたわけです。そうするとホームディレクトリが、下の名前を使って漢字で作成されるわけです。

 まあ、見栄えの問題ならよかったんですが、実害が出始めるとちょっと問題……。これが原因という確信があったわけではないのですが、あらためてアルファベットで「MMIZUNO」というローカルアカウントを作ってみたら、全ては解決してしまったのです。

 このマシンにインストールしてあった「Autodesk Alias」がトラブって起動できなかった問題も解決しました。「そういえば、Aliasってファイル名とかファイルパスって、シングルバイトじゃなきゃダメだったっけ……」。そんなベンダー在籍当時の記憶もよみがえりました。

 「Autodesk Inventor」を最初にインストールしたときも、「Material Library」が所定の位置にあってレジストリも問題ないはずなのに、データがロードできないという問題がありました。このときは、完全にアンインストールしてから再インストールしたら、なぜか治ったので、原因は分からずじまいでしたが……、ひょっとしたらこれも日本語のユーザー名が原因だったのかもしれません。

 ……と、まあ、この手の問題は、シングルバイト環境である英語圏の人が主に集うサポートフォーラムの中を探したところで、出てこないわけですね。

 最近、Windows8.0から8.1にしたらおかしくなった、例えば「画面が真っ白になってWindow右上の×印だけが表示される」みたいな話をお聞きすることもあります。それがまた再インストールしたら治る、みたいな話もあったり。

 いずれにしても、この手の問題は、時間をかけてじっくりと情報を探したりして、ロジカルにつぶしていけば何とかなることも多いのです。しかし普段からPCをいじり慣れている人たちばかりではないですから、このあたりは問題として残り続けるのでしょうか……。

パーソナル3Dプリンタの場合も同じ?

 無償3次元CADと似たような状況は、安価なパーソナル3Dプリンタについても当てはまるのではないでしょうか。確かに個人で買うと、20万円といえば高い値段です。しかし工作機械として考えれば、メーカーはこの手の商品のサポートに手を掛けていては赤字になる……、というのが大きな声では言えない本音ではないでしょうか。そもそも、海外のベンチャーの商品だと、そんな工数は到底取っていられないし、そんなマンパワーないし、ということも珍しくはないでしょう。

 そういう意味では、「パーソナル3Dプリンタは、まだコンシューマ製品とはいえない」ということを売る側も買う側も認識しないと不幸なことになりそうです。

 先日、とあるセミナーでお話をさせていただく機会がありました。私自身も、他のスピーカーの方も、「パーソナル3Dプリンタは、実によくトラブルを起こす」という話をしました。

 で、トラブルが起きるのは仕方ないとして、問題はその先です。自分自身で何か対処するしかないわけです。別に、こちらは3Dプリンタで遊びたいわけではなくて、3Dプリンタを使って何かを出力したいわけです。そんな修理とか何やらで時間を使いたいわけではないのです。

 それでも、やはりパーソナル3Dプリンタを……となると、あくまでも自分で修理するための情報を集め、部品を集め、修理する必要があるわけです。ちなみに、このてん末については、以前、この連載の記事「3Dプリンタが壊れました」でも書きました。

 先日、Kickstarter経由でとある3Dプリンタを調達したという方とお話をしました。大幅に待たされて納品された上に、使い始めて早々、温度センサーが脱落したとか、いろいろとトラブルがあったそうです。

 自ら修理する一方、Twitterでこの自分と同じマシンを使用している人たちを探し、一斉に呼びかけて、「今度会って、情報交換をしましょう!」といった話をしたところ、すぐに反応があったとか。基本的に無償のものや安価なものを使用するときには、このくらいのフットワークの軽さがあるとよさそうです。

 断っておきますが、123D Designもパーソナル3Dプリンタも私は大好きです。しかし、「無償」とは無条件に良い話ばかりではない。使うためには、自分の方にも積極性と時間の投資が求められる、というお話でした。

 それから、「ソフトいじりやハードいじりが大好きで全然苦にならない」という人は別ですが、そうでなければ市場でもメジャーなものを選ぶのが無難かもしれません。

 実はワタシ、昔からマイナーなものが好きだったりします。大昔、BASIC機をいじっていた頃、PC-8001とかFM-7とかにしておけばよいものを、もっとマイナーな機種を選んでしまい、情報が少なくて困った記憶があります。

 3次元CADや3Dプリンタもやはりユーザー数が多い方が、情報も探しやすいので何か起こった時の対処のヒントが得られやすいと思います。

 肝心なときに、ソフトやハードが動いてくれないと、ある格言を思い出します。

 「タダより高いものはない」

 まあ、何というか……、自分の時間や手間が取られるので、そういう意味でのコストは案外掛かりますね。

 それでは。

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Profile

水野 操(みずの みさお)

1967年生まれ。ニコラデザイン・アンド・テクノロジー代表取締役。マルチ・ディメンション合同会社社長。3D-GAN理事。外資系大手PLMベンダーやコンサルティングファームにて3次元CADやCAE、エンタープライズPDMの導入に携わったほか、プロダクトマーケティングやビジネスデベロップメントに従事。2004年11月にニコラデザイン・アンド・テクノロジーを起業し、オリジナルブランドの製品を展開しているほか、マーケティングやIT導入のコンサルティングを行っている。著書に『絵ときでわかる3次元CADの本』(日刊工業新聞社刊)などがある。



編集部からお知らせ:審査員に水野操さん

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