NECは、どうやって「在庫が山積みなのに売り場は欠品」状態から脱却したのか:メイドインジャパンの現場力(2)(2/3 ページ)
「なぜこんなに在庫が残っているのに欠品が起こるのか」。NECでは1990年代まで、需給ギャップに円滑に対応できず、サプライチェーンの各所で在庫の山が発生していた。その状況から脱却できたのは2000年から取り組みを本格化させた生産革新の成果だ。その革新の最前線でもあるNECインフロンティア東北を訪ねた。
生産革新の現場では何が起こっていたのか
それでは、これらの生産革新の成果は生産現場にはどのような影響を与えたのだろうか。モノづくり革新活動のモデルケースとしても紹介されるNECインフロンティア東北の取り組みを紹介する。
NECインフロンティア東北は、宮城県白石市にあるNECインフロンティアの100%子会社となる製造工場だ。敷地面積は6万6000m2、建屋面積は2万4000m2で、約360人の従業員が働いている。
同社は1981年に東北日通工として創立、2001年に現在のNECインフロンティア東北に改称し、電話機やVoIPゲートウェイなどの通信機器やPOS端末などの情報機器の生産を続けている。
トヨタ生産方式を導入しプッシュからプル型生産へ
NECインフロンティア東北が生産革新活動に本格的に取り組み始めたのは2001年からだ。NECインフロンティア東北 社長の加登達也氏は「2000年までは工場で個別に取り組んできたことが多かったが、2001年から本格的にトヨタ生産方式の導入が始まった。2007年まではコンサルタントの指導を得て進め、2008年からはわれわれ独自で自律した生産革新活動を続けてきた」と話す。
トヨタ生産方式の導入として、2S(整理、整頓)・3定(位置と品、量を定める)やかんばん方式の採用によるプル型生産方式の実現などの基本的な取り組みを実践し、ライン間での中間在庫の大幅な圧縮に成功した。また部品の受け入れにおけるオペレーションを改善。従来は段ボールによる納入だったのを通い箱(TPトレイ)による納入に変えた他、パレットベースによる動きが中心だったのをかんばん単位でモノが動く仕組みに変更した。さらにストア棚ベースでの在庫管理を中心とし、部品在庫も大きく圧縮することに成功している(関連記事:“かんばん方式”にまつわる誤解・曲解・勘違い)。
工程の改善活動なども日常的に行う。工程が抱える問題を模造紙に張り出し、一元的に見えるようにすることで、問題の解決を図る取り組みを行う。その際ポイントになるのが「解決策を問わないことだ」と加登氏は語る。問題点とともに解決策をセットで提案させようとすると、解決策が見つからない問題が共有できなくなる。「まずは問題点を洗い出し、他の人の知恵も使って解決策を図れるようにすることが大事だ」と加登氏は強調する。
物流を1つの「基準時間」に
また、工場内外の「物流」を1つの基準時間として活用し、生産性向上に役立てているのも特徴的だ。これは、日通NECロジスティクスの物流網を利用し、NECグループ全体として構築を進めてきたものだという。
まず工場外では、ハブ&スポーク方式(集荷拠点を作りそこから各拠点に配送する方式。各拠点間輸送よりも効率的だといわれる)およびミルクラン方式(1つの車両で複数の荷主を巡回して集荷する輸送方式)を効果的に取り入れ、効率的で定時配送が可能な物流体制を構築。1日4便ある定期便で部品の入荷や製品の出荷を行うため、これらに合わせた生産スケジュールが作れる。
さらにこの入出荷の定期便を起点に、工場内の構内物流体制を構築している。物流ハブ拠点から受け入れた部品は、15分もしくは30分に1回の運搬により、部品ストアから製造ラインへ運ばれ、製品は15分に1回の運搬により製造ラインから出荷場へと移される。そこから物流ハブとなっている配送センターへ定期便で運ばれ、顧客に届けられる。
加登氏は「リードタイムが明確になり、適性在庫が把握できるようになる。また無駄な在庫を持たずに済み、市場の変化に柔軟に対応できる」と効果を語る。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.