比喩とQC7つ道具を使って、小難しい話を分かりやすくしよう:甚さんの「コミュニケプレゼン」大特訓(5)(3/3 ページ)
誰かに専門的なことを説明するときは、なるべく簡単なことに置き換えて説明しよう。カレーライスのように身近で親しみやすい例がよい! 自分自身の理解度が甘ければ、比喩もうまくできないかも。
QC7つ道具と比喩のまとめ
技術者にとって、「QC7つ道具を使いこなす」ということは、大工のノコギリ、カンナ、金づちに相当します(これも比喩ですね)。
そんじゃエリカちゃん、ここら辺でまとめてみチくれ!
まず、口頭での比喩は、設計書と設計審査の事例で理解しました。難解な技術や単語を説明するとき、「例えば」の接続詞を入れ、その後ろは、やさしい事例や単語を用いて、相手とのコミュニケーションを図ります。
おぉ、すんばらしい! 次は良君、QC7つ道具の場合をまとめチくれ!
液晶プロジェクタや配布物などによる技術資料を解説する場合の比喩は、「QC7つ道具」を適用します。さらに、そのポイントは、以下の通りですね。
- 「我流のオレ流」ではなく、正統派のQC7つ道具を適用すること。
- 7つの道具を、目的に応じて的確に使い分けができること。
おぉ、すんばらしい! さすが、富士山麓大学の大学院で首席の院卒ヤロウだなぁ、ていしたもんよ。さっきは本当のことをゆってゴメンよ!
いえいえ……、本当のことですから……ね。
かつて筆者がOA機器メーカーに勤務していたころ、管理職研修の一環で「傾聴力」がテーマのセミナーを2日にわたって受講しました。
結論から言うと、「二度と受講したくないセミナー」の1つです。なぜかと言えば、セミナーの内容が、明らかに「営業向け」「管理者向け」「総務部向け」なのに、そこに技術者が一斉に押し込まれ、おじさん同士が向かい合っての実習……。このような形態のセミナーで本当に、技術者のコミュニケーション能力が向上すると思いますか?
技術者には“技術者向け”のコミュニケプレゼンのスキルアップが必要なのです。今回の「比喩」という道具は、その代表例だと思います。
最後に、原価の話をもう少しだけ
あの甚さん、私自身、技術者としての原価意識、低コスト化意識のあたり、ちょっと自信ないんです。
えっと……お恥ずかしながら、僕も。ただ、僕らに限らず、日本人の技術者って、原価意識が低いんじゃないかと思うんですよ。海外技術者の原価意識ってどんな感じなのですか?
おう、分かったよう。今回のテーマ「比喩」からは少しそれるが、ついでだ。QC7つ道具を使って説明してやんよ。
最後に、「日本人技術者の原価意識」、別の言い方をすれば、「日本人技術者の低コスト化意識」です。それを、QC7つ道具の「管理図」、さらにその中の「円グラフ」を使って解説します。
実は、幾つかの有名な日本企業が、隣国の企業にあっという間に追い付かれ追い越された最大の原因は、「日本人技術者の低コスト化意識の希薄さ」です。
日本企業は、「安かろう、悪かろう」から世界一の品質を誇る工業国となりました。しかし、高度成長はそこで停滞してしまったようです。高品質は当たり前、高品質だけでは生存できる状況ではないことに気が付くのが遅すぎました。
このせいで、日本企業は、韓国や中国の幾つかの優秀な企業に追い着かれ、追い越されちまったんだぜぃ。
図2は、当事務所のWebページ内に併設されている「質問コーナー」に寄せられた内容の分析です。質問者の多くは、日本、韓国、中国の技術者たちでした。
中国や韓国では、第1位で32%を占める「低コスト化」に関する質問が多く、これから判明することは、品質と低コスト化の両立に関する設計手法を模索していることが伺えると推定しました。
一方、日本の技術者からの特徴は、低コスト化手法の質問は極端に少ないということです。低コスト化を力説しているのは、社長をはじめ、経営者だけなのでしょうか?
なんだか、身につまされる思いです……。
僕もだよ……。うーん、なぜ日本人技術者は、コストや低コスト化に興味を持たないのか? もう打つ手はないのか?
それをこれから変えていくのは、オメェたちだぜぃっ!
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また次回お会いしましょう。
Profile
國井 良昌(くにい よしまさ)
技術士(機械部門:機械設計/設計工学)。日本技術士会 機械部会、埼玉県技術士。横浜国立大学 大学院工学研究院 非常勤講師。首都大学東京 大学院理工学研究科 非常勤講師。
1978年、横浜国立大学 工学部 機械工学科卒業。日立および、富士ゼロックスの高速レーザプリンタの設計に従事。富士ゼロックスでは、設計プロセス改革や設計審査長も務めた。1999年より、國井技術士設計事務所として、設計コンサルタント、セミナー講師、大学非常勤講師としても活躍中。「ついてきなぁ!加工知識と設計見積り力で『即戦力』」(日刊工業新聞社)と「ついてきなぁ! 『設計書ワザ』で勝負する技術者となれ!」(日刊工業新聞社)をはじめとする多数の書籍を執筆。
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