検索
ニュース

坂が上れない!? 超小型EV開発の課題を解決する村田製作所のリチウムイオン電池オートモーティブワールド2014

超小型電気自動車(EV)を開発する際にもリチウムイオン電池が課題になっている。モーターに対応した出力性能を確保するには数多くの電池セルを搭載する必要があるが、その場合はコストと重量が増加してしまい超小型EVの魅力が失われかねないのだ。村田製作所の高入出力リチウムイオン電池を使えば、この課題を解決できるかもしれない。

PC用表示 関連情報
Share
Tweet
LINE
Hatena
村田製作所の「高入出力型ハイブリッドリチウムイオン蓄電池モジュール」を搭載した「ZieD α1」

 村田製作所は、自動車技術の展示会「オートモーティブワールド2014」(2014年1月15〜17日、東京ビッグサイト)において、高い入出力性能を特徴とするリチウムイオン電池モジュールを展示した。

 同社は、パッケージがラミネートタイプのリチウムイオン電池の開発を進めてきた(関連記事:車載リチウムイオン電池の増産計画が相次ぐ)。今回展示したリチウムイオン電池モジュールの放電レートは40C、充電レートは20Cとなっている(1Cは電池の全容量を1時間で充放電できるだけの電流量)。一般的な車載リチウムイオン電池の充放電レートは、高くても1ケタC程度であり、その10倍以上の入出力性能を有していることになる。このため、「6分間で容量の約90%を充電でき、放電時も100Aまでの大電流を出力可能」(村田製作所)である。

 同社ブースでは、この高入出力リチウムイオン電池を用いたモジュールと、従来型の容量性能を重視したリチウムイオン電池のモジュールを組み合わせた「高入出力型ハイブリッドリチウムイオン蓄電池モジュール」を、ベンチャー企業のジードが開発した超小型電気自動車(EV)の試作機「ZieD α1」に搭載して展示していた。

 ZieD α1は、ボディフレームに駆動装置や電池モジュールを搭載した「2人の移動に必要最小限のサイズで美しい乗り物」をコンセプトとする簡素な超小型EVである。外形寸法は全長2130×全幅866×全高1190mm、車重は94kg。モーターは定格出力が0.9kW、最高出力が1.4kWで、リチウムイオン電池の容量は30Ahだ。最高速度は時速25km、走行距離は20km程度となっている。

村田製作所の「高入出力型ハイブリッドリチウムイオン蓄電池モジュール」を搭載した「ZieD α1」
村田製作所の「高入出力型ハイブリッドリチウムイオン蓄電池モジュール」を搭載した「ZieD α1」。中央にあるモジュールのうち、赤色のユニットが高入出力リチウムイオン電池、緑色のユニットが従来型のリチウムイオン電池である(クリックで拡大)

 村田製作所の説明員によれば、「超小型EVを開発する上では、リチウムイオン電池の入出力性能がボトルネックになるという課題がある。モーターの出力を引き出すには、従来型のリチウムイオン電池だと電池セルを数多く搭載すればよいのだが、その場合コストが増えて重くなるので超小型EVとしてメリットが小さくなってしまう。しかしリチウムイオン電池の電池セル数を減らすと出力不足になり、坂を登れない車両になってしまう。そこで、当社の高入出力型ハイブリッドリチウムイオン蓄電池モジュールであれば、登坂時など入出力性能が求められる場合には当社の高入出力リチウムイオン電池の電力を使い、駆動力があまり必要ない平地での走行では従来型のリチウムイオン電池の電力を使うことにより、多くの電池セルを搭載しなくても済むようになる」という。

超小型EVに従来型リチウムイオン電池を用いる場合と「高入出力型ハイブリッドリチウムイオン蓄電池モジュール」を用いる場合の比較
超小型EVに従来型リチウムイオン電池を用いる場合と「高入出力型ハイブリッドリチウムイオン蓄電池モジュール」を用いる場合の比較(クリックで拡大) 出典:村田製作所

 しかし、入出力性能を重視するのであれば電気二重層キャパシタと従来型のリチウムイオン電池を併用することも考えられる。これに対して同説明員は、「電気二重層キャパシタは容量が小さすぎるため、例えば登坂時であれば上り切るまでに容量がゼロになってしまう。当社の高入出力リチウムイオン電池は、従来型のリチウムイオン電池ほどではないが電気二重層キャパシタよりもはるかに容量が大きいので、そういった問題は起こらない」と説明している。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る