パナソニックが切り開く車載ニッケル水素電池の新市場:ハイブリッド車向けだけじゃない(1/3 ページ)
ハイブリッド車(HEV)などに搭載される車載ニッケル水素電池で世界をリードするパナソニック。同社は、車載ニッケル水素電池の新たな用途を開拓すべく、急激に市場が拡大しているアイドルストップシステムをターゲットにした製品を開発した。
新たな環境対応車として電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)の量産が始まったことによって、車載用の二次電池といえば、リチウムイオン電池に注目が集まっている。以前から内燃機関車に搭載されている鉛バッテリーや、現行のほとんどのハイブリッド車(HEV)に搭載されているニッケル水素電池が話題に上ることは少ない。
車載ニッケル水素電池については、HEVへのリチウムイオン電池搭載が広がっている(例えば、トヨタ自動車の「プリウスα」の7人乗りモデル、日産自動車の「フーガ ハイブリッド」、ホンダの「CR-Z」など)こともあって、今後は市場が縮小すると予想する向きもある。
パナソニックが関わる車載ニッケル水素電池の2大メーカー
リチウムイオン電池メーカーが大企業からベンチャーまで世界に多数乱立しているのとは違い、ニッケル水素電池を手掛ける企業は少ない。特に、車載ニッケル水素電池は、トヨタ自動車の子会社であるプライムアースEVエナジーと、パナソニックグループ エナジー社の2社がリードする市場になっている。
プライムアースEVエナジーは、1996年の設立時にパナソニックが40%出資していたこともあってパナソニックEVエナジーという社名だったが、パナソニックが三洋電機の買収に当たって独占禁止法に抵触しないように出資比率を19.5%まで下げたため、現在の社名になった。「プリウス」や「アクア」をはじめ、トヨタ自動車のHEVに搭載されているニッケル水素電池を供給している。HEVの最大手がトヨタ自動車である以上、車載ニッケル水素電池のトップ企業もプライムアースEVエナジーであることは当然のことだ。
一方のパナソニックグループ エナジー社は、パナソニックが買収した三洋電機の車載ニッケル水素電池を扱っている。三洋電機の車載ニッケル水素電池といえば、ホンダの「インサイト」や「フィット ハイブリッド」、VolkswagenやFord MotorのHEVに採用されていることで知られている。とはいえ、車載ニッケル水素電池市場でトップをひた走るのがプライムアースEVエナジーであることに変わりはない。現状では、永遠の2番手であり、車載リチウムイオン電池のHEV採用の拡大を考慮すれば、安穏とはしていられない状況にある。
アイドルストップシステム搭載車市場は2020年に4800万台へ
パナソニックグループ エナジー社が車載ニッケル水素電池事業を成長させるためには、HEV以外の新たな用途を見つける必要がある。その新たな用途こそ、2013年2月8日に発表したアイドルストップシステム向けの「12V エネルギー回生システム」なのだ。
12V エネルギー回生システムの開発を担当した、同社車載電池ビジネスユニットでアルカリ電池技術グループのグループマネージャーを務める川瀬龍二氏は、「2012年時点で、世界の自動車市場約8000万台のうち、アイドルストップシステム搭載車は約1100万台だった。2020年には、世界の自動車市場は約1億1000万台まで成長するが、アイドルストップシステム搭載車がその40%以上となる約4800万台を占めるまでに急拡大するとみられている。12V エネルギー回生システムの投入によって、アイドルストップシステム搭載車市場の拡大に貢献したい」と語る。
12V エネルギー回生システムは、エンジンルーム内に設置される鉛バッテリーと並列接続することを想定し、70℃という高温下でも十分な効率で充放電を行えるニッケル水素電池を採用している。これにより、鉛バッテリーだけでは蓄電しきれなかったブレーキの減速エネルギーの回生によって得た電力を、ニッケル水素電池にもれなく蓄電できるようになった。さらに、アイドルストップシステム搭載車で頻繁に繰り返される充放電をニッケル水素電池で引き受けることで、従来は2〜3年程度しかもたないと言われていたアイドルストップシステム用鉛バッテリーの寿命を大幅に延命することもできる。
なお、12V エネルギー回生システムの詳細は、2013年2月8日付けの既報を参照してほしい。
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