検索
連載

自動ブレーキも横滑り防止装置も、ドライブバイワイヤあってのものだねいまさら聞けない 電装部品入門(11)(4/4 ページ)

電子制御によってアクセルペダルの踏み込み具合とスロットルバルブの開度を連携させるドライブバイワイヤ(Drive-By-Wire、DBW)システム。今回は、DBWシステムの動作の安全性を確保する仕組みや、自動車の進化を支えるDBWシステムのメリットを紹介する。

Share
Tweet
LINE
Hatena
前のページへ |       

自動ブレーキや横滑り防止装置もDBWシステムが必須

 もう1つのメリットは、燃費に特化したスロットルバルブの開き具合を、アクセルペダルの踏み込み量に関わらず自在にコントロールできる点です。

 従来のケーブル式スロットルバルブ機構では、「アクセルペダルの踏み込み量=スロットルバルブ開度」という機械的な強制力を伴った構造でしたが、DBWシステムの場合は違います。

 特に、発進時におけるスロットルバルブの開き方というのは燃費に大きく影響します。車両が動き出した瞬間は、ゆっくりとスロットルバルブを開く方が燃費向上に効果的と考えられています。このため、ドライバーがアクセルペダルを0.1秒間に4分の1踏み込んだとしても、DBWシステムの制御によってスロットルバルブを0.2秒費やしてゆっくりと開くといった発進制御が可能です(実際にはさらにいろいろな制御が入っています)。

 他にも、アクセルペダルを急に全閉にした場合に緩やかにスロットルバルブを閉じる制御や、ポンピングロス低減のために意図的にスロットル開度を大きくする(インテークバルブの開閉タイミングも連動)など、機械的に連結していたケーブル式では実現できなかったさまざまな機能が次々に導入されています。

 最近話題になっている富士重工業の「アイサイト」(自動停止機能付きプリクラッシュセーフティシステム)を代表とする安全技術も、アクセルペダルとスロットルバルブとが機械的につながっていないDBWシステムがなければ実現できません。それもそのはず、ケーブル式ではアクセルペダルを踏み込んでいれば確実にスロットルバルブが開いたままですので、出力を制限することが非常に難しくなるからです。

 2012年10月以降、新たに製造される登録車(新型・フルモデルチェンジ)に装着が義務化された横滑り防止装置も同じですね。*3)

*3)横滑り防止装置とは、新型ではないが継続して生産されている登録車と新型の軽自動車は2014年10月以降、それ以外の自動車は2018年2月以降に義務化される。



 このように、DBWシステムの導入は自動車業界の技術進歩に大きな革命をもたらしました。一見すると何かあったら危険では? と思ってしまうバイワイヤ系のシステムですが、ブレーキバイワイヤは既に量産車へ採用されていますし、さらに近い将来にはステアバイワイヤも量産車へ採用されると考えられています。

 これらの機構を電子制御で自在に操れるようになることで、自動車の軽量化やコストダウンはもちろん、人間では回避できないような危険を電子システムが回避してくれるなど、さまざまな可能性を秘めています。自動運転技術などの話題もよく耳にするようになりましたが、これらの電子制御技術が安心・安全な自動車社会の構築に貢献してくれることを切に願っています。

 次回はオートクルーズシステムについて紹介します。お楽しみに!

プロフィール

カーライフプロデューサー テル

1981年生まれ。自動車整備専門学校を卒業後、二輪サービスマニュアル作成、完成検査員(テストドライバー)、スポーツカーのスペシャル整備チーフメカニックを経て、現在は難問修理や車両検証、技術伝承などに特化した業務に就いている。学生時代から鈴鹿8時間耐久ロードレースのメカニックとして参戦もしている。Webサイト「カーライフサポートネット」では、自動車の維持費削減を目標にしたメールマガジン「マイカーを持つ人におくる、☆脱しろうと☆ のススメ」との連動により、自動車の基礎知識やメンテナンス方法などを幅広く公開している。



Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

前のページへ |       
ページトップに戻る