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ダイハツが液体燃料電池車開発に傾ける本気度を見よ、「FC凸DECK」は実際に走る東京モーターショー2013(2/2 ページ)

ダイハツ工業が、「第43回東京モーターショー2013」に出展した、同社の「貴金属フリー液体燃料電池」を搭載する軽トラックのコンセプトカー「FC凸DECK」は、実際に走行できる車両だ。FC凸DECKが、大型放射光施設「SPring-8」内の敷地を走行している映像も公開されている。

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課題は耐久性とエネルギー変換効率

 FC凸DECKが実際に走るとはいえ、貴金属フリー液体燃料電池は研究開発中のものだ。まだ課題は多い。

 ダイハツ工業の説明員によれば、課題は2つあるという。1つは、燃料電池スタックの耐久性である。1台の車両を10年間使用する場合、燃料電池スタックには総計5000時間稼働させても大幅に出力が落ちない耐久性が求められる。現時点では、この5分の1に当たる1000時間の耐久性しか得られていない。

 もう1つの課題は、エネルギー変換効率である。ヒドラジン一水和物から得られるエネルギーのうち、現時点では30%程度の損失がある。この損失を可能な限り減らして、エネルギー変換効率をさらに高めたい考えだ。

インフラ整備はそれほど難しくない?

 さらに、貴金属フリー液体燃料電池を搭載する車両を普及させるには、燃料であるヒドラジン一水和物を供給するためのインフラ作りも必要になる。トヨタ自動車や日産自動車、ホンダが推進する水素燃料電池車も、水素ステーションが整備されなければ普及は難しい。2011年に先述の3社とエネルギー事業者10社が共同で発表した「燃料電池自動車の国内市場導入と水素供給インフラ整備に関する共同声明」では、2015年までに100カ所程度の水素ステーションの先行整備を目指すとしている。

 ダイハツ工業は、貴金属フリー液体燃料電池の燃料となるヒドラジン一水和物は液体なので、ガソリンスタンドで取り扱えると想定している。ガソリンスタンドの所轄官庁である消防庁にも提案しているところだ。

 ヒドラジン一水和物の取り扱いがそれほど難しいものにならないのもメリットの1つだ。ロケット燃料などに用いられる無水ヒドラジンとは違って発火性は低い。引火点は75℃で、軽油よりも安定なのだ。一般に化学薬品として流通しているヒドラジン一水和物は劇物に指定されているが、濃度を30%以下にすれば劇物指定から外れる。このことを利用して、実際に使用する場合には濃度10%でインフラに供給することを検討しているという。

普及に向けた仲間作りも

 ダイハツ工業の車両の他にも、貴金属フリー液体燃料電池を搭載する製品が発売されれば、ヒドラジン一水和物のインフラ整備や価格の低減につながる。同社が、車両以外の用途で有望視しているのが発電機だ。東京モーターショー2013では、出力が2kWの「FC-Dock 20C」と、出力が0.5kWの「FC-Dock 5C」を展示して、これらの技術を定置型発電機などとして事業化するパートナーを模索している。

「FC-Dock 20C」と「FC-Dock 5C」の展示
「FC-Dock 20C」(左)と「FC-Dock 5C」の展示。中央にある燃料補給用のボトルを使えば、ヒドラジン一水和物に直接触れることなく簡単かつ安全に燃料補給を行える(クリックで拡大)

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