自動運転車やEVは都市計画にどのような影響を与えるのか:和田憲一郎の電動化新時代!(8)(1/3 ページ)
「CEATEC JAPAN 2013」、「第20回ITS世界会議2013」、「第43回東京モーターショー2013」と、自動車の新技術が発表されるイベントが続く今年は、自動運転車や電気自動車(EV)などの次世代自動車に関する話題で持ちきりだ。建築家や都市計画の担当者に、「次世代自動車が都市計画に与える影響」について聞いた。
次世代自動車が普及段階に差し掛かっている。エネルギー源が、従来の化石燃料から電力に置き換わる次世代自動車に対応するため、充電インフラなどの整備も進みつつある。また今年(2013年)になって、「自動運転」や「ワイヤレス給電」などの新技術が各種イベントに合わせて公表されている。
これらの次世代自動車が普及すれば、都市計画にも影響が出てくるのではないか。そこで今回は、建築家や都市計画の担当者に、「次世代自動車が都市計画に与える影響」をテーマにヒアリングを行い、クルマと都市の将来像を探った。
グリッドシティに替わってニューロシティが生まれる
まず、建築家であり、東京都市大学教授でもある渡辺誠氏に、将来のクルマと都市計画の在り方についてお話を伺った。
和田憲一郎氏(以下、和田氏) 次世代自動車が普及すると、都市計画にどのような影響を与えるとみているか。
渡辺氏 ガソリン車がEVに替わっても、ガソリンスタンドが電気スタンド(?)に変わるだけでサイズ以外に違いはない。しかし、クルマは使わない時間帯が多いことを考えると、EVの場合は動力源として活用する方法が生まれてくる。つまり、使わない間は無用のものだったクルマが、建築の付帯設備の1つとして位置付けられる可能性がある。
例えば、立体駐車場が電源供給設備になるかもしれない。従来の駐車場は、クルマを駐車するためだけにただ面積を取る、できればない方がいいものだった。しかし、小さな発電所、蓄電所としての役割を持つことで、建築物に不可欠な電気設備の1つになり得るのではないか。
また、EVは排気ガスを出さないことから、家の中に引き入れられるようになる。その時、クルマを家の一部として扱うことも考えられる。そうなると、EVは家の部屋の1つとして普段は建築物の本体にくっついているが、必要があれば離脱することもできるようになる。EVは、フラットな床に車輪が4つ付いているという形状も可能だ。平らな床の上に人が立てれば、それはもう1つの空間だ。
このように、クルマを「設備」や「空間」として定義できるようになると、今までにはなかったデザインや役割が生まれてくるのではないだろうか。クルマと建築のデザイナーによるコラボレーションから、面白いものが生まれるかもしれない。
和田氏 2013年10月に開催された「第20回ITS世界会議2013」では、車車間通信を活用した交通円滑化走行技術「CACC(Cooperative Adaptive Cruise Control)」によるデモンストレーションが行われるなど、最近になって自動運転が話題になっている。自動運転が都市計画に与える影響をどう考えるか。
渡辺氏 これは都市デザインに影響が大きいかもしれない。現在の交通インフラは鉄道とクルマに頼っている。鉄道は大量に人を運ぶことができるが軌道システムが必要だ。逆にクルマはキャパが小さいものの移動の自由度は高い。また、鉄道は車両の運行状態はコントロールされているが、現在のクルマはバラバラである。
しかし、先述のようなCACCを用いたクルマは、鉄道と現在のクルマの中間的な存在になるのではないか。例えば、現代の都市は、鉄道駅を中心に放射線状に形成されていることが多い。しかし、CACCのようにクルマとクルマ、クルマと人が通信するようになれば、街中における相互の関係をうまく調整できるかもしれない。このように、互いの関係が上手くバランスをとるようになる状態を「高度適合」と呼んでいるが、そのような仕組みは、生物が持っているものに近い。街中におけるクルマと人の動きが、人体における血管の血流のようになれば、それは有機体に近づく。街が、生物のような機能と形を持つかもしれない。
従来、クルマと人は、車道と歩道、もしくは上は人、クルマは下というように、分けておくことが良いとされてきた。しかしこれからは、例えばクルマが小学校のある地域に入ると、「ここは走行速度が時速20km以下のゾーンA」というように、自動的に速度をコントロールすることもできる。そうなると、道路は必ずしも碁盤の目状でに整備される必要はなくなる。イタリアの中世都市のような網目状に道路が広がる市街地であっても、人とクルマが共存できるようになる。
人とクルマが高度に適合した関係を持つ、ニューロンのようなネットワーク状の街が、可能になるかもしれない。もちろん、そうしたシステムを全面的に信頼するのではなく、リスクを予見して対応手段を用意しておく必要もあるだろう。その上で、歩いて楽しく、人とクルマが互いに安全に移動できる魅力的な街ができればよいと思う。
和田氏 世界的規模で、地方から都市に移住する傾向が強まっているが、これについてはどう考えているか。
渡辺氏 それは環境全体として考える必要がある。人がたくさん集まれば、ヒートアイランドのような負荷が高まるし、小学校が急激に不足するが10〜20年経過すると不要になるというような、社会インフラの需給ミスマッチも起きる。CACCによる渋滞回避にも限界がある。
ただし、集中には、何かを生み出すためのパワーが増すという利点がある。そうしたさまざまな変化と作用を予測した上で、集中と過疎化をどう判断するかが問われる。
同時に、当然ながら、地方の良さや強みを育てることも重要だ。地方が大都市のミニチュアとなるように追い掛けても勝てない。どの都市に行っても同じような複合施設があるのではなく、コピーではない、その地域の人々の活動の強みや他の街にない特質を発見して伸ばすような街づくりが、ますます求められてくる。
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