自動運転についてロボットとセンサーの視点から考える:和田憲一郎の電動化新時代!(6)(1/3 ページ)
最近になって「自動運転」という言葉を聞く機会が増えている。しかし、話題が先行するばかりで、その課題がいまひとつはっきりしていないように見受けられる。そこで、自動車メーカーからの視点ではなく、ロボットメーカーやセンサーメーカーからの視点で、自動運転を実現させるための課題を追った。経済産業省の担当者へのヒアリング結果も併せて紹介しよう。
「自動運転」。自動車にとって古くて新しいテーマだが、最近メディアで取り上げられることが多くなってきた。
そのきっかけは2010年のGoogleの発表にさかのぼるかもしれない。Googleは、米国の複数の州で自動運転に関する実証試験を実施しており、現在も継続中である。遅ればせながら、日本の自動車メーカーも研究開発に着手しているが、その動きは分かりにくい。このため、話題となっていながらも、自動運転の課題となるといまひとつはっきりしない。
このような状況の中、自動車メーカーからの視点ではなく、ロボットメーカーやセンサーメーカーからの視点で、自動運転の課題についてアプローチを試みた。それは取りも直さず、自動車メーカーからとは逆の新たな視点に立って見ることで、課題が浮き彫りになり、核心に迫れるのではないかと考えたからである。また、トンネルのように、逆サイドから掘り進むことで実現への近道が見つかる可能性もある。
ロボットメーカーの視点
ロボットベンチャーとして知られるゼットエムピー(ZMP)は、自動運転技術の研究開発に用いる「RoboCar PHV」なども提供している。同社社長の谷口恒氏に、ロボットメーカーが自動運転に取り組む理由を伺った。
和田憲一郎(以下、和田)氏 なぜ今、自動運転に注目が集まっているのか。そのメリットは。
谷口氏 大きく分けて2つの理由がある。1つは高齢者の増加だ。最近は、高齢になるとクルマを安全に運転できなくなるからといって免許を取り上げようとするが、むしろ元気に運転していただく方が望ましい。しかし、能力的には衰えがくるので、それを補うための自動運転技術を実用化すれば、高齢者の寿命が延び、医療費の削減にもつながるのではないか。
もう1つは、若者のクルマ離れだ。最近は免許を持たない若者も増えている。彼らは、運転することに価値を見いださず、SNSやゲームなどに価値を見いだそうとしている。1日24時間ある中で、睡眠や食事などの必要時間を取り除くと、現代人は自由に使える時間が限られてくる。その中で、クルマの運転というものを重要視しなくなったのではないだろうか。つまり時間を有効に使う際の優先順位が変わってきているように思える。
和田氏 既存の車両をベースに自動運転用の研究車両を製造しているが、その技術的難易度は。
谷口氏 センサーや制御技術が進んだこともあり、技術的にはかなり高いレベルのところまできている。
和田氏 自動車メーカーが、自動運転にどのように取り組んでいるかは分かりにくい。
谷口氏 従来、自動車メーカーは、クルマの運転を楽しむ“Fun to Drive”を中心に販売展開してきた。ドライバーが運転しない自動運転には、積極的に取り組みづらいだろう。自動車メーカーにとっては“革命”のように思えるのかもしれない。トップもなかなか判断できないのではないか。
和田氏 そのような状況下で、なぜZMPは自動運転にトライするのか。
谷口氏 ソニーの「ウォークマン」もそうだが、まずは誰かがやってみせることが大切ではないだろうか。その取り組みの中で課題も見えてくる。われわれはロボットメーカーではあるが、これまでの知見を投入し、自動運転についての出口を探っていきたい。
※ZMPは、2013年7月18〜19日に開催した「第5回ゼットエムピーフォーラム」において、バージニア工科大学とSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)技術を用いた次世代自律走行の共同研究を開始すると発表した。詳細は、同年10月15日から開催される「第20回ITS世界会議東京2013」で披露される予定だ。
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