EV向けワイヤレス充電の技術開発が進展、トヨタも2014年に実証実験を開始:CEATEC 2013
電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)向けのワイヤレス充電システムの技術開発が進展している。「CEATEC JAPAN 2013」では、2014年に実証実験を開始するトヨタ自動車の他、パイオニアとTDKが展示を行った。
電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)の普及を加速させるのに不可欠と言われているのがワイヤレス充電システムだ。「CEATEC JAPAN 2013」(2013年10月1〜5日、幕張メッセ)では、トヨタ自動車とパイオニア、TDKがEV/PHEV向けワイヤレス充電システムに関する展示を行っていた。
トヨタ自動車は磁界共鳴方式を採用
トヨタ自動車は、磁界共鳴方式を用いたワイヤレス充電システムと、同社のPHEV「プリウスPHV」に受電モジュールを搭載した試作車を公開した。この試作車とワイヤレス充電システムを用いて、2014年中にも実証実験を始める予定だ。
ワイヤレス充電システムの出力は2kW。プリウスPHVの車載充電器と同じなので、満充電までの時間は90分である。ワイヤレス充電システムは、電池パックの充電状態に合わせて電力を制御する充電制御についても無線通信で行う必要がある。無線通信の方式は、「Wi-FiもしくはZigbeeを検討している」(同社)という。
トヨタ自動車は2011年4月、米国のベンチャー企業WiTricity(関連記事:ワイヤレス充電で世界最先端を走るWiTricity、その実像に迫る)に出資し、同社が有力な特許を持つ磁界共鳴方式のワイヤレス充電技術の共同開発を始めた。磁界共鳴方式は、送電モジュールと受電モジュールの位置ずれが大きくても一定以上の効率で充電が可能なことから、EV/PHEV向けワイヤレス充電システムの本命と目されている。
周辺技術を固めるパイオニア
パイオニアは電磁誘導方式を用いたワイヤレス充電システムを展示した。同社は、2010年のCEATECから続けて電磁誘導方式のワイヤレス充電システムを出展しており、毎年進化させてきた(2011年の展示、2012年の展示)。
今回の進化ポイントは2つある。1つは、充電時に発生する放射電磁界の低減とともに、送電モジュールと受電モジュール間の距離が変動しても安定して充電を行えるようにするなど、実用化に向けた性能の最適化を図ったことだ。なお、放射電磁界の値は76.5dBμV/mで、これは米国連邦通信員会(FCC)の規制値である83dBμV/m以下となっている。
もう1つは、ワイヤレス充電システムと、スマートフォンやカーナビゲーションシステムなどの車載情報機器を連携させるためのアプリの開発である。従来は送電モジュールに接続した制御パネルで充電操作を行っていたが、スマートフォンや車載情報機器と制御パネルをWi-Fiで接続して操作を行えるようになった。また、スマートフォンのアプリを使えば、外出先からの状態監視や充電操作なども可能だ。
パイオニアのワイヤレス充電システム。出力は3kWで、総合効率は85%。送電モジュールと受電モジュールの位置ずれは±10cmまで対応可能。ワイヤレス充電に使用する周波数帯は85kHzである(クリックで拡大)
電磁誘導方式で展示を行っているパイオニアだが、磁界共鳴方式への対応も進めている。「kWレベルの出力になると、電磁誘導方式と磁界共鳴方式の共通点は多いので、電磁誘導方式から磁界共鳴方式への移行は十分可能だ。また、磁界共鳴方式に移行しても、実用化に向けた性能の最適化、スマートフォンや車載情報機器との連携機能といった周辺技術は活用できる」(パイオニア)という。
TDKは受電モジュールを小型化
TDKは、大幅に小型化した磁界共鳴方式の受電モジュールを披露した。設置面積は、ほぼA4ノートサイズで、体積も従来比で4分の1に低減した。この受電モジュールと組み合わせて用いるワイヤレス充電システムの出力は3.3kWである。
同社のフェライト材料「PC95」を採用するとともに、磁気回路の構造を最適化するシミュレーション技術などを活用して小型化を実現したという。
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