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新型「タント」の燃費が「スペーシア」を超えなかった理由エコカー技術(2/3 ページ)

ダイハツ工業はスーパーハイトワゴンタイプの軽自動車「タント」をフルモデルチェンジした。JC08モード燃費は28.0km/l。従来モデルから12%向上したものの、競合車種の「スペーシア」の29.0km/lを上回ることはできなかった。これは、軽量化によって得られた車重の余裕を、燃費性能ではなく、使い勝手と乗り心地に振り分けたためだ。

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軽量化の効果をどう使うか

 3つ目となるのが燃費向上技術の王道と言える軽量化だ。実は、この軽量化によって得られた車両重量の余裕を、燃費性能に振り分けるのか、使い勝手と乗り心地につながる機能や装備に振り分けるのかが、新型タントとスペーシアの違いになっているのだ。

 新型タントでは、先述したスポイラー一体バックドアの他にも、フードやフロントフェンダー、フューエルリッド、レールカバーなどの外板を樹脂パーツに置き換えて、約10kgの軽量化を実現している。

樹脂パーツに置き換えた外板
新型「タント」では、多くの外板を樹脂パーツに置き換えた。オレンジ色の部分は、新たに樹脂パーツを採用した外板。緑色の部分は従来モデルから樹脂パーツを使用している外板である(クリックで拡大) 出典:ダイハツ工業

 この他、構造の合理化による部品点数の削減や、高張力鋼板の最適配置などによって約60kg軽量化している。

構造の合理化や高張力鋼板の最適配置の事例
構造の合理化や高張力鋼板の最適配置の事例(クリックで拡大) 出典:ダイハツ工業

 中位グレードである「Xグレード」で比較すると、従来モデルの930kgから70kg軽量化されるので860kgになる計算だ。従来モデルから装備を変更せずに、軽量化された車両重量で商品化すれば、その分燃費を向上できるはずだ。しかし新型タントでは、70kgの軽量化によって得られた車両重量の余裕を、基本性能の向上と標準装備の充実に振り分けている。

 例えば、新型タントは、最も安価なLグレードでも、両方の後席ドアがパワースライドドアになっている。従来モデルと比べると、運転席側の後席ドアがパワースライドドアになるので、その分だけでも約10kgの重量増加になる。

「タント」の従来モデルと新モデルの静粛性比較
「タント」の従来モデルと新モデルの静粛性比較(クリックで拡大) 出典:ダイハツ工業

 また、走行安定性を向上するため、足回り部品としてリヤスタビライザーも標準装備として追加した。さらに、走行時の静粛性を高めるための部品を多数採用。エンジン始動時のクランキング音の抑制や、走行時の車室内における会話明瞭度指数の向上、マフラー容量拡大による排気音の低減によって、小型車並みの静粛性を実現した。

 これらの取り組みと関連する部品の追加により、結果的に車両重量は70kg増加し、従来モデルと同じ930kgとなっている(Xグレードの場合)。しかしながら、進化版イーステクノロジーの搭載と空力性能の向上の効果もあって、JC08モード燃費は28.0km/lに向上している。

「タント」の従来モデルと新モデルの重量比較
「タント」の従来モデルと新モデルの重量比較。70kgの軽量化によって得られた車両重量の余裕を、基本性能の向上と標準装備の充実に振り分けているため、従来モデルと新モデルでは結果的に重量が同じ930kgになっている(クリックで拡大) 出典:ダイハツ工業

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