3DプリンタでiPhoneケースを造形しよう:パーソナル3次元プリンタ入門(8)(3/3 ページ)
作成したiPhoneケースの3次元モデルをパーソナル3Dプリンタの「Replicator」で出力! さてちゃんとiPhone5にはまるかどうか……。今回、最終回! 筆者が作った3次元モデルもゲットできる。
造形終了
造形が終了したら、造形物の温度が十分下がった後にビルドプレートから造形物を剥がします。終了直後はノズル、ビルドプレートともに高温になっているため、触れないように注意しましょう。また、温度が高いうちに造形物を剥がそうと力を加えると、造形物が曲がったり反ったりする可能性があるので、冷めた後に剥がした方がよいです。
造形物を剥がすのには造形物とビルドプレートに傷を付けないように、ヘラを用いるとよいです。Replicatorには付属していないので、ホームセンターなどで購入しておきましょう。
ラフトを使用しないで、ビルドプレートに直接造形物を出力する場合、ビルドプレートに造形物が強く貼り付いて剥がれなくなるときがあります。対策として、3次元モデリング時に、ビルドプレートと造形物の間にヘラの先端が入り込めるように、角Rをつけたり、突起部分を付ける形状とするとよいです。それでも、剥がれない場合は、ビルドプレートをあたためたり冷やしたりすると少し剥がれやすくなります。
ケースを剥がしたら、ノギスで仕上がりの寸法を計測してみます。
ケースの内寸は、「59.6mm」の設定値に対して、実寸は「59.2mm」でした。造形方向や使用している素材や使用しているマシンの個体差、造形温度やエクストルーダの送り速度など、さまざまな条件によって仕上がりの寸法は変わってきます。自分のマシンと素材の特性を把握しておくと、狙った寸法の物を造形物するのにトライアンドエラーの回数が減ると思います。今回は収縮を見込んでiPhone5の外形寸法に対して1mm余裕を持たせていました。
それでは、ついに作成したケースにiPhone5をはめ込んでみます。
問題なく、ケースにはめ込むことができました! ケース内壁の突起部分がiPhone5本体を押さえ込めています。
コネクタ、カメラ、スピーカ、ボタン類もうまく避けられています。
今回作成した3次元モデルのSTLデータを「Thngiverse」にアップロードしました。モデリングの際の参考にしてみてください。
モノづくりは大変だけど、楽しい!
3Dプリンタは、個人ユースでも購入することできるくらい価格が下がってきており、この記事を連載している間にも、次々と新しい機能が追加されたり、既存の機能が大幅に改善されたマシンが登場してきています。
3次元CADについては、無料のソフトウェアが多数登場し、プロ用の高価なソフトウェアを購入しなくても3次元モデリングがある程度できるようになりました。無料の3次元CADは、高価なソフトウェアと比較すると、当然、機能はかなり劣りますし、大人数のチームで設計開発するような仕事には向きません。ですが、個人用3Dプリンタで造形するデータを作るだけであれば、十分な機能です。
とはいえ3次元CADは、一般の多くの人にとってなじみづらい操作が多いソフトウェアです。それに、個人用の3Dプリンタの設定は難しく、機械の不具合なども多いため、狙った通りの造形物を出力することは簡単ではありません。
個人のモノづくりは、確かに「コストのハードル」が劇的に下がりましたが、「技術のハードル」を越えるには、当分、少しの苦労が必要でしょう。だからこそ、自分でデザイン、設計したモノが形として出力されたときの喜びは大きいのです! 3Dプリンタから造形終了の電子音が鳴ると心おどるものがあります。この楽しさを知ってもらうために、この「パーソナル3次元プリンタ入門」が一助となればとてもうれしいです。(終わり)
Profile
森田浩史(もりた ひろふみ)
早稲田大学大学院機械工学科卒業。家電メーカーでカーナビの機構設計に従事。SIerでの勤務後、フリーランスを経てチームラボへ入社。Webシステムの構築をしながらチームラボMAKE部でハード、ソフトを問わずモノづくりに携わっている。
筆者ブログ:「3Dプリンターにバンザイ!」
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