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レプリケーターと3次元プリンタのいろいろな方式パーソナル3次元プリンタ入門(1)

パーソナル3次元プリンタの使い方に入る前に、さまざまな造形方式について説明する。

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3次元プリンタ入門への序章

 3次元プリンタは、「スイッチ、ポン」で何でも作れる魔法の箱? 個人でも購入できるほどに低価格化し、日本でもメディアの脚光を浴びることになった3次元プリンタですが、これまでの報道で「誰でも簡単に、思い描いたものが作れてしまう」ようなイメージを多くの人に与えてしまっているように思います。

 しかし、製品としてのパーソナル(個人用)3次元プリンタは、まだまだ黎明(れいめい)期にあると言ってよいでしょう。紙のプリンタのような高い完成度もまだ持ち合わせていません。

 また、多くの方にとってなじみの薄い3次元データを扱うため、技術的なハードルは価格ほどには下がっていないのが現実です。思い描いた形の印刷という勝利にたどりつくためには、メーカーのサポートも十分に得られないまま、マシンをいじりまわし、3次元データ作成に悪戦苦闘しなければなりません。

 それにもかかわらず、これまでの報道では、3次元プリンタでの実際の作業について詳しく語られてきませんでした。

 3次元プリンタで本気でモノづくりしたい人に真実を伝えなければ。この連載では3次元プリンタの入手からモノの印刷まで、具体的な作業によりフォーカスを当て、「うまくいったときの喜び」と、「うまくいかないときの苦悩」とを交えながら、3次元プリンタ入門への道筋を述べていきます。

3次元プリンタの造形方式のいろいろ

 今回紹介する3次元プリンタは米MakerBot社の「Replicator」です。


Replicator本体

 2012年の夏に個人でこのマシンを購入しました。MakerBot社は個人用3次元プリンタ開発を行うベンチャー企業で、クラウドファンディングのKickstarterで大きな資金を調達したことでも話題になりました。Replicator以前にもユーザー組み立て式の3次元プリンタを販売していました。Replicatorは初めての完成型の製品で、印刷品質も以前のモデルより向上しています。2013年3月現在、Replicatorの後継モデルとなる「Replicator 2」、「Replicator 2X」が発売されており、製品としての完成度は徐々に上がってきています。

 3次元プリンタの出力方式は以下のように、熱溶解積層、粉末焼結、光造形など幾つかの方式が存在します。

熱溶解積層

 XY方向に動作するエクストルーダー(樹脂射出機)と、Z方向に動く出力ステージを備えています。フィラメント(糸状)になった樹脂をエクストルーダーに引き込んで溶かして、出力ステージ上に1層ずつ積み重ねて3次元造形していきます。


造形機の各部名称(熱溶解積層)

粉末焼結

 粉末樹脂に対し炭酸ガスレーザーを照射して焼結させる方法。粉末樹脂の中の、3次元物体の断面形状になる部分にレーザー照射して材料を融解させた後に焼結させます。高さ方向に動く出力ステージ上に、断面形状を1層ずつ積み重ねていきます。

光造形

 紫外線硬化樹脂に紫外線レーザーを照射して任意の形状を硬化させる方式。バット(容器)に満たされた液状の紫外線硬化樹脂にレーザー照射し、硬化させます。高さ方向に動く出力ステージ上に、硬化させた断面を1層ずつ積み重ねていきます。

 Replicatorは、個人用の安価なモデルで多く採用されている熱溶解積層方式です。

 次回は、「3次元プリンタの選び方」について述べます。

Profile

森田浩史(もりた ひろふみ)

早稲田大学大学院機械工学科卒業。家電メーカーでカーナビの機構設計に従事。SIerでの勤務後、フリーランスを経てチームラボへ入社。Webシステムの構築をしながらチームラボMAKE部でハード、ソフトを問わずモノづくりに携わっている。

筆者ブログ:「3Dプリンターにバンザイ!」



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