中国排出権取引、省エネ工場の日本企業は排出権ビジネスの勝者なのか――PwC:製造マネジメントニュース(2/2 ページ)
PwC Japanは「海外サステナビリティの最新動向と日本企業の課題」をテーマに、米国や中国の事例などを紹介し、戦略的に気候変動対策に取り組む価値について訴えた。
排出権取引が始まった中国
一方、環境問題が深刻で人々の生活環境やビジネス環境が大きく脅かされている中国でも、政府による環境問題への取り組みは強化されている。中国の第12次5カ年計画(2011〜2015年)では、炭素強度(エネルギー単位当たりの排出炭素の重量)の17%削減や非化石エネルギーの利用を11.4%に向上、戦略的新興産業育成、などを計画し取り組みを進めてきた。
「中国の取り組みといえば、“有言不実行”であることが多かったが、環境問題への取り組みは異なっている。その1つの裏付けが排出権取引を試験的に開始したことだ」とPwC 香港ディレクターのハンナ・ルース(Hannah Routh)氏は指摘する。
排出権取引とは、企業が排出できる二酸化炭素(CO2)の上限値を設定し、その上限以上のCO2を排出する際にはその分の排出権を購入しなければならない、というものだ。一方で排出上限値以下のCO2排出量であれば余った排出権を他の企業に売却することができる。
中国では2013年6月に深セン市で排出権の試行取引が開始された。同取引の枠組みには635社が参加し、日本企業は16社が参加している。また取引所による炭素1トンの価格はここ3カ月間で2倍になったとされている。中国ではこの他上海市や北京市など7つの試験取引所を用意し、排出権取引の実現を進めていく方向だという。
戦略の有無が勝敗のカギ
ルース氏は「中国がこうした取引を市場に委ねるケースは非常に珍しい。2016年からの第13次5カ年計画では、この枠組みを中国全土に広げることが確実視されており、排出権ビジネスは今後大きく成長する可能性がある。優れた省エネ技術を持つ日本企業にとっては大きなチャンスであり、排出権ビジネスの勝者になれる可能性がある。一方で排出権ビジネスそのものは欧米が先行しており、これらに対し戦略的にどう取り組むかが勝敗を分けることになるかもしれない」と話している。
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