現場の発想を即決実行! 三菱電機ホーム機器が高級白物家電で連勝する秘密:小寺信良が見たモノづくりの現場(7)(2/4 ページ)
総合電機メーカーとして存在感を築く三菱電機。重電分野などが強いが、意外にも高級白物家電では“尖った”製品でヒットを連発している。そのモノづくりの現場は“人”を中心とし、自発的な発信が飛び交う自由闊達(かったつ)なものだった。小寺信良が報告する。
数多くの“業界初”製品
1977年には、世界で初めて電子レンジと電気オーブンを一体化した、オーブンレンジを開発・発売した。排気の温風で掃除機内のダニを死滅させる「ダニパンチ」、ステンレスボディ採用のジャー炊飯器、「おそうじメカ」搭載空気清浄機など、数多くの業界初を輩出している。
中でも1987年発売のフライパン機能付きオーブンレンジのヒットは、業界としても大きなターニングポイントとなった。当時のオーブンは、お菓子やケーキ、クッキー作りなど、毎日作るものでもなく「子どもにそんなことがしてやれたら」という主婦の“夢を売る製品”であった。
しかしこの製品は、フライパンで焦げ目を付けた後、それをそのままオーブンに入れて調理する、“おかずを作る機器”という切り口で製品化した。ガスコンロで料理している後ろでもう一品おかずができるという、第2の調理器具としてのきっかけを作った。これ以降オーブンレンジ業界は、主婦の日常の料理の負担を軽減するものを開発するようになる。
現在同社が力を入れるIHクッキングヒーターは、1999年に自社開発して以降、東日本大震災までは順調に2桁成長を続けてきた。震災以降は需要は前年ベースでは落ち込んだが、新築時のビルトイン型の普及は続いている。
同社が「びっくリングIH」として導入を勧めているクッキングヒーターは、同心円だけではなく、上下左右に独立したコイルを配置する。これらを内側、外側だけでなく、左右方向にも加熱シーケンスを組むことで、鍋の中で対流方向を変える。煮物料理もかき混ぜる必要がなく、焦げ付きも抑制するという。
2009年には、蒸気を出さない炊飯器を開発した。これまでの炊飯器は、炊きあがり時に熱い蒸気が出て壁紙を汚したり、あるいは子どもがイタズラして火傷するという事故が多かった。これを水冷タンクを使って蒸気を内部で処理するようにしたのだ。
この製品は、同年の第3回キッズデザイン賞で大賞を受賞している。家電製品では初めての受賞であり、審査委員からは「キッズデザインの見本とも言うべき製品」とのコメントを受けている。
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