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「GT300プリウス」にサラウンドビュー!? フリースケールがスーパーGTで実験開始GTAが認可

フリースケール・セミコンダクタ・ジャパンは、GTレースカーを用いた次世代運転支援システム(ADAS)の実装実験を、スーパーGT第4戦から本格始動すると発表した。当初は「GT-R」を使っての実験になるが、第2戦で優勝した「GT300プリウス」への搭載も検討しているという。

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スーパーGT第4戦からADASの実装実験を行う「IWASAKI OGT Racing GT-R」

 フリースケール・セミコンダクタ・ジャパン(以下、フリースケール)は2013年7月12日、東京都内で会見を開き、2013年3月に発表したGTレースカーを用いた次世代運転支援システム(ADAS)の実装実験を、SUPER GT(スーパーGT)第4戦(2013年7月27〜28日、スポーツランドSUGO)から本格始動すると発表した(関連記事:GTレースカーにミリ波レーダーを搭載、フリースケールがスーパーGTで半導体開発)。スーパーGTを運営するGTアソシエイション(GTA)が、レースやレーシングチームへの支障のない範囲での実験を認めたという。

 ADAS実装実験の開始に合わせて、スーパーGTへの参戦体制も変更した。第1戦と第2戦はフリースケールがメインスポンサーの「OGT!Bonds Racing」として、日産自動車の「NISSAN GT-R NISMO GT3」の2013年モデルを駆って、GT300クラスに参戦していた。第4戦からは、同じGT300クラスではあるものの、有力レーシングチームであるエー・ピー・アール(apr)からの参戦となる。

 なお、aprは、ハイブリッドGTレースカーである「GT300プリウス」により、第2戦のGT300クラスで優勝している。apr代表取締役の小山伸彦氏によれば、「スーパーGTのようなメジャーカテゴリーのレースで、トヨタ車と日産車が同一チームから参戦するのは初めてのことではないか」という。

 フリースケールがメインスポンサーとなる車両は、ADASに関わる技術開発で協力するイワサキインダストリーの名前が入り、「IWASAKI OGT Racing GT-R」となる。カーナンバーも7番から30番に変更される。

スーパーGT第4戦でADASの実装実験を行う「IWASAKI OGT Racing GT-R」
スーパーGT第4戦でADASの実装実験を行う「IWASAKI OGT Racing GT-R」。一番左にいるのが、フリースケールのディビット・M・ユーゼ氏、左から3番目がaprの小山伸彦氏である(クリックで拡大)

 フリースケール社長のディビット・M・ユーゼ氏は、「GTAからの認可をいただき、ついにスーパーGTの舞台でADASの実装実験を始められることになった。今回のADASの実装実験では、トヨタ車と日産車が同一チームからスーパーGTに参戦したり、半導体メーカーであるフリースケールがGTAと協力したり、今まであった業界や系列の垣根を越えた取り組みによって実現できた。今後も、こういった垣根を越えた取り組みを進めて、日本の自動車業界やモータースポーツを盛り上げていきたい」と語る。

全ての情報を時間軸で同期して取得

 スーパーGTの第4戦では、GT-RにADASを搭載して実装実験を行う。実験の項目は4つある。1つ目は、エンジンやブレーキに関わる車両情報の取得である。フリースケールのマイコンを搭載するデータロガー「MoTeC-ADL3」にこれらの情報を記録する。

 2つ目は、車両周辺情報の取得である。車両の前後左右に車載カメラを設置して、周囲のライブ映像を撮影/記録する。車載カメラからの映像データをイーサネット経由で伝送し、フリースケールの車載情報機器向けプロセッサで処理して周辺360度の連続画像に合成する。いわゆる「サラウンドビュー」である。また、第4戦では搭載しないものの、SiGeプロセスで製造した77GHz帯ミリ波レーダーを使った情報取得も行う予定だ。

 3つ目はドライバーの生体情報の取得だ。フリースケールは2012年に、ワンメイクのカーレース「ポルシェ カレラカップ ジャパン(PCCJ)」に参戦し、ドライバーのバイオメトリクス計測を行っているが、スーパーGTでも同様の取り組みを行う(関連記事:「カレラカップ」レースカーで研究開発を推進、フリースケールが新たな取り組み)。ただし、「使用するバイオメトリクス計測システムは技術的にレベルアップしている」(ユーゼ氏)という。

 4つ目は、取得したこれらの情報の解析である。車両に搭載するLTE通信ユニットでクラウドサーバに送信し、データを解析/加工してからドライバーやパドックなどにリアルタイムでフィードバックする。これらの情報を1つの画面に統合して見せることで、レース場の観戦客や遠隔地のファンなどが、スーパーGTをさらに楽しむことも可能になる。

 そして、2012年のPCCJ参戦時と大きく異なるのは、これらの全ての情報を時間軸で同期した形で取得している点だ。PCCJでは、それぞれ独立して情報を取得していたという。

左の図は、スーパーGTにおけるADAS実装実験の概要である。右の図は、取得情報を時間軸で同期して見せるシステムのイメージだ(クリックで拡大) 出典:フリースケール・セミコンダクタ・ジャパン

 なお、現時点では、LTE通信ユニットの通信速度がレース場ごとに異なったり、観戦客がいるときに安定した通信が行えるか分からなかったりという問題がある。このため、全ての取得情報はADASシステムを統合制御するユニット内のSSDに記録する予定である。

車両後部に搭載するADASの統合制御ユニット
車両後部に搭載するADASの統合制御ユニット。「OGT!Racing」のステッカーが貼ってある。重量は約8kg(クリックで拡大) 出典:フリースケール・セミコンダクタ・ジャパン

「GT300プリウス」にもADASを搭載へ

 小山氏は、「ADASの実装実験は当初はGT-Rだけで行うが、関連各社との調整が終わればGT300プリウスにも搭載したい。バイオメトリクス計測は、過酷な環境にさらされるドライバーの安全確保に有用だし、車両内外の情報をリアルタイムで見せるシステムは、レースのファン層拡大にもつながるだろう」と述べている。

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