“筋肉バカ”な精密加工屋さん、かわいい筋肉育成グッズを開発する:マイクロモノづくり 町工場の最終製品開発(25)(2/2 ページ)
もともとは現役プロキックボクサーである自分のために作ったけれど、意外と女性にも好評だった。軽量で女性や子どもでも、楽しみながら筋肉が育成できるという「くるくるパンプアップ」とは?
クラウドファンディングに挑戦!
秋山さんは、クラウドファンディングにも初挑戦しました。前回の村井さんと同様に、自身の思いや志を込めた動画や画像などの商品説明コンテンツを用意し、enmonoによるモノづくりに特化したクラウドファンディングサイト「zenmono(ゼンモノ)」にプロジェクトを掲載開始。量産資金の調達を募りながら、商品企画のブラッシュアップのためのマーケティング活動も行っていくことにしました。
現在(記事公開時点)は、目標金額の30万円は無事達成し、商品化に向けてスタートを切ることができる見込みです。
バリューチェーンをつないで形にするプロデューサー
今回の秋山さんについても、マイクロモノづくりのフレームワーク・改(第24回より採用)に当てはめて整理してみましょう。
まず企画やテーマについては、秋山さん自身が“好きで好きでたまらない”筋力トレーニングと、本業の精密金属加工技術の融合から着想しました。世の中のたくさんの人に、自分のような健康な肉体を獲得してほしいという思いと志を持ち、くるくるパンプアップを商品化しました。
デザインに関しては、zenmonoで請け負ってくれる仲間を募集しています。仲間が見つかり次第で、パッケージデザインなどをブラッシュアップしていきます。
試作については、自社にあるリソースを使い、何度も繰り返しました。そして、zenmonoへのプロジェクト掲載も、自分で動画や写真などのコンテンツを用意し、対価となるステッカーなども自社内で制作して実現化しました。その後、プロジェクト自体は継続していますが、目標金額は無事に達成し、量産したものを販売するプロセスに入ってます。
クラウドファンディングを活用したスピード感ある商品開発は、個人〜小規模なメーカーに向いています。資金調達面の他、「製品の試作段階から事前予約を取り、販路開拓もできる」という利点など、クラウドファンディングをマイクロモノづくりで利用することによる効果については、本連載の第23〜25回も併せてご覧ください。
秋山さんによるクラウドファンディングのプロジェクトは無事、目標金額に達しました。その後も、ビジネスとして長く継続していくことを目指し、量産、販売と挑戦していきます。秋山さんのマイクロモノづくりへのチャレンジは、「現在進行形」です。
「価値観は多様化しています。新しい価値・市場・ニーズを探すために、アンテナを張り巡らせていく必要があります」と秋山さんは言います。その精神で、「たたき合いのマイナス競争」を「切磋琢磨のプラス競争」に変えられる信じ、「まず自分が変わりたい」ということでした。
これからのモノづくりについて語る秋山さんは、お客さんから注文が入るのを待っていただけの1年前と180度変わっていました。
enmonoの「マイクロモノづくり経営革新講座」
製品企画の源泉となる発想は、自分一人で生み出すのはなかなか難しいと思います。enmonoでは、マイクロモノづくり経営革新講座を開講しています。この記事に登場した村井さんはこの講座の第4期生で、マイクロモノづくりのビジネスにチャレンジしている真っ最中です。村井さんのように「今まで苦労して自社商品開発に取り組んできたけれど、うまく実を結ばなかった」「何か新たなきっかけをつかみたい!」という方にとって、「何を作るのか」というニーズ探しの手助けができるのではと考えています。
発電会議
enmonoは、東京都大田区の町工場2代目集団「おおたグループネットワーク(OGN)」と組んで、「発電会議」という町工場が製品開発の種を見つけるためのオープンな商品企画会議を定期的に実施しています。製品企画の素となる発想は、1人ではなかなか難しいものです。この会が皆さんの「何を作るのか」というニーズ探しの一助になればと思っています。開催予定日や会場、テーマなどの情報は、下記のFacebookページから確認できます。ぜひご参加ください。
Profile
宇都宮 茂(うつのみや しげる)
1964年生まれ。enmono 技術担当取締役。自動車メーカーのスズキにて生産技術職を18年経験。試作メーカーの松井鉄工所にて生産技術課長職を2年務めた。製造業受発注取引ポータルサイト運営のNCネットワークにて生産技術兼調達担当部長として営業支援に従事。
2009年11月11日、enmono社を起業。現在は、製造業の新事業立上げ支援(モノづくりプロデューサー)を行っている。試作品製造先選定、部品調達支援、特許戦略立案、助成金申請支援、販路開拓支援、プレゼン資料作成支援、各種モノづくりコンサルティング(設備導入、生産性向上のためのIT化やシステム構築、生産財メーカーの営業支援、生産財の販売代理、現場改善、製造原価、広告代理、マーケティング、市場調査、生産技術領域全般)など多岐にわたる。
Twitterアカウント:@ucchan
記事で紹介した企業も登場:MMS放送アーカイブ
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