「じゃがりこ」の油を使用!? カーボンニュートラルなエネルギー、バイオディーゼル燃料の現在地:小寺信良のEnergy Future(24)(4/4 ページ)
環境負荷の少ないバイオディーゼル燃料(BDF)だが、海外では活用が進むものの日本ではそれほど広がりが見えていない。今回はBDFを自社で精製する埼玉県の篠崎運輸倉庫の取材を通じ、BDFの活用方法と問題点について考えてみた。
BDF普及を阻害する問題
BDFの利用は、化石燃料を使わず廃物を利用している点や、CO2削減といった観点から、もっと促進されてもいいはずである。世界的にも2005年あたりからBDFの生産は激増しており、市場をリードしているのは米国、アルゼンチン、ドイツ、フランス、ブラジルの5強で全体の6割を占める。
日本では、省エネへの取り組みに対する補助金などはあるものの、本格的な普及には至っていない。BDFを使わなければならないという縛りがあるわけでもなく、先に述べたように税制の優遇措置もないからだ。コスト的なメリットが少ないため、CO2削減による温暖化対策といったビジョンがなければ続けられない社会貢献活動のような立ち位置になってしまっている。
一方でブラジルや韓国では、販売するディーゼル燃料にBDFを2%混合することを義務付ける政策を打ち出している。韓国では自国で生産するBDFが足りないため、日本にまで買い付けに来ているほどだという。
また収支という面も問題は多い。量産すればそれなりに利益が出る可能性はあるものの、そんなに大量の廃油を安価に集める手段がないことや、精製時に分離されるグリセリンの用途が見つからないなど、インフラ的な問題が普及の障害になっている。
さらに"廃油をエネルギーに変えて再利用している"という社会的にクリーンなイメージは、廃油を売る食品製造側に付いていきがちだ。廃油を出す側はこれまでお金を払って捨てていたもので利益を出し、さらにはイメージアップにもなると、いいことずくめであるが、実質的にコストを払って精製する運輸事業者には社会的なメリットも薄いという点も、隠れた問題の1つであろう。
少なくとも現状のBDF製造者は、"いいことしてるのに虐げられる"ような状況に陥っており、この社会的不遇が是正されない限り、BDFの普及は難しいように感じられた。
筆者紹介
小寺信良(こでら のぶよし)
映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。
Twitterアカウントは@Nob_Kodera
近著:「USTREAMがメディアを変える」(ちくま新書)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.