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次世代エネルギーへの序章小寺信良のEnergy Future(1)(1/2 ページ)

小寺信良氏の新連載が@IT MONOistでスタート。発電/蓄電/送電の3つをテーマに、次世代エネルギーについて語る。第1回はこの3つのテーマを語る前に知っておきたい「電池業界」を紹介しよう。

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 東日本大震災とそれに伴う原発事故をきっかけに、日本国民のエネルギーに対する意識はガラリと変わった。去年の夏に消費者がエネルギー問題で気にしていたのはせいぜい電気代とガソリン代、白物家電で「エコ」と言われれば、「エコじゃないものよりはマシ」といった程度であったろう。しかし今回のような事態になって気が付くのは、電気エネルギーは地域別の電力会社によって寡占的に供給されており、選択肢などなかったという事実である。

 もっと多様なエネルギーの供給先があってもいいのではないか、あるいは新しいエネルギー供給会社ができてもいいのではないか。そういう世論の先には、電力会社が主導する原発とは違うやり方ができるはずだ、という考え方がある。

 MONOistの連載を開始するに当たって、どんなテーマにするかいろいろと考えたが、筆者の得意なネットやAV機器の延長線上に、どうしても次世代エネルギーの話は避けられないのではないか、という気がした。次世代エネルギーを支える技術開発は家電メーカーが、事業展開は携帯電話キャリアが名乗りを上げるという事態になっているからだ。

 とは言うもののエネルギー関係の取材は、特に門外漢にはハードルが高い。特許や社外秘の技術が多くあり、最先端の部分はまずメディアには公開されないのが普通である。しかし幸いにして、AV機器メーカーには長年の記事執筆で、いくらかコネクションがある。最初から核心に迫る記事は難しいかもしれないが、少しずつ次世代エネルギーへの扉を開いて行ければと考えている。もちろんこれを読んで気の毒に思ったメーカー様からのご教授も、歓迎である。

参入の余地が多くある太陽電池の市場

 エネルギー問題でテーマにしたいのは、発電と蓄電である。さらに送電にも新しいテクノロジーが必要だ。しかしこれら3つのテーマを語る前に、いわゆる電池業界というものについて知っておく必要がある。

 例えば乾電池(一次電池)を見てみると、これはある意味枯れた業界であり、世界的に見ても製造メーカーは大手数社に限られる。中身の構造は、市販品を買ってきて分解・解析すれば分かる。いくら特許があるとはいっても、そうそう新特許に値するような方式が生まれるわけでもない。ここに新規参入しても、うまみはほとんどない世界だ。

 一方、今注目の太陽光発電については、若干事情が異なっている。一般には太陽電池と呼ばれるが、電気を貯めないものでも、電気を発生させるものを「電池」と呼ぶものなのだそうである。

 太陽電池には複数の方式があり、発電方法や使用材料によって細かく系統が分かれている。大まかにはシリコン系、化合物系、有機系などと分類するが、厚みによる分類、素材の接合数による分類、動作原理による分類など、多くの分け方がある。それだけいろいろな方法があるということである。

 方式が多いことからも分かるように、この分野は研究機関も多く、参入メーカーも多い。これはまだまだ、市場が成熟していないことを示している。どの方式がメインストリームということではなく、発電効率と製造コストのバランス、さらに利用場所や規模によってさまざまな選択が可能であるため、参入の余地が多くあるということである。

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