高い圧縮率を実現するJTフォーマットの定義:ISO国際規格に承認されたJTフォーマットとは(2)(2/3 ページ)
国際標準化機構(ISO)に承認されたJTフォーマットを解説する本連載。3D製品情報の可視化を軽量なデータフォーマットで提供できる仕組みはどういうものでしょうか。第2回目となる本稿では、各種定義について紹介します。
データセグメント
セグメントコンテンツの分類はセグメント型によって定義されます。以下にセグメント型の全分類を示します。
- ロジカルシーングラフ(LSG)
- JT B-Rep
- PMI(3次元注記)データ
- メタデータ
- Shape
- Shape LOD0〜Shape LOD9
- XT B-Rep
- ワイヤフレーム表現
- ULP
- LWPA
JT B-Repセグメントには、ある特定パートの精密なジオメトリ境界表現をJT B-Repフォーマットで定義するエレメント(要素)が含まれます。また、XT B-Repセグメントには、ある特定パートの精密なジオメトリ境界表現をParasolid境界表現(XT)フォーマットで定義するエレメントが含まれます。
ワイヤフレームセグメントには、ある特定パートの精密な3Dワイヤフレームデータを定義するエレメントが含まれます。JT ULPセグメントには、ある特定パートの精密なジオメトリ境界表現をJT ULP(Ultra Lightweight Precise)フォーマットで定義するエレメントが含まれます。
JT LWPAセグメントには、ある特定パートの軽量で精密な解析形状を定義するエレメントが含まれます。より詳細には、ある特定パート内のB-Rep定義に含まれる解析サーフェスのコレクションになります。
LSGセグメント
LSGセグメントには、無閉路有向グラフ構造(LSG)を形成するために有向参照先を通って接続されているオブジェクト(エレメント)のコレクションが含まれます。LSGはモデルのグラフィカルな記述であり、モデルの物理コンポーネントを表現するグラフィック形状と属性、そのコンポーネントの任意のメタデータ(名前、意味のルールなど)を識別するプロパティ、コンポーネントの関係を表す階層構造を含みます。
LSGの参照先が「有向」ということは、先行処理から後続処理への「状態/属性」の継承があることをデフォルトで意味しています。エレメントには、グラフエレメント、プロパティアトムエレメント、プロパティテーブルの3種類があります。
グラフエレメントは、LSG無閉路有向グラフ構造のバックボーンを形成し、その形成のためのJTモデルの基本的記述となります。グラフエレメントには2種類の一般分類があります。ノードエレメントと属性エレメントです。
ノードエレメントはLSG内のノードであり、一般に内部ノードとリーフノードに分類されます。リーフノードは通常、モデルの物理コンポーネントの表現に使用される形状ノードであり、一部のグラフィック表現もしくはジオメトリを含むか、または参照します。内部ノードはリーフノードの階層構造を定義し、モデルの空間的関係と論理的関係を構築し、多くの場合、LSGから全ての子ノードへと継承される情報(属性エレメント)を含むか、または参照します。
ノードエレメントは、モデルのコンポーネント間の関係を表します。モデルのコンポーネントの階層構造は、特定のデータ型のノードエレメントを介した形をしています。ノードエレメントには、別のノードエレメントへの参照先のコレクションが含まれ、さらにその別のノードエレメントも別のノードエレメントのコレクションを参照します。
ノードエレメントはまた、ジオメトリ形状、プロパティ、ならびにパーティションノードエレメント、グループノードエレメント、インスタンスノードエレメント、パートノードエレメント、メタデータノードエレメント、LODノードエレメント、レンジLODノードエレメント、スイッチ、形状ノードエレメントといったモデルのコンポーネントおよびその他の表現を定義する情報を格納する(直接的・間接的)フォルダでもあります。
属性エレメントは、グラフィックデータ(色、テクスチャ、マテリアル、照明などの外観特性や位置変換)を表し、ノードに関連するオブジェクトとしてLSGセグメントに格納されます。属性エレメントはそれ自体ノードではなく、どのようなノードとも関連付けることができるエレメントです。属性が関連付けられていないノードはその親ノードから引き継ぎます。
属性エレメントは、マテリアル属性エレメント、テクスチャーイメージ属性エレメント、描画スタイル属性エレメント、光源設定属性エレメント、無限遠光源属性エレメント、点光源属性エレメント、線種属性エレメント、点種属性エレメント、幾何変換属性エレメント、シェーダーエフェクト属性エレメント、頂点シェーダー属性エレメント、フラグメントシェーダー属性エレメント、テクスチャー座標生成属性エレメントなどを含みます。
プロパティアトムエレメントは、ノードまたは属性に関連付けられたメタデータオブジェクトです。ノードでも属性でもなく、ノードまたは属性と関連付けられて、そのノードまたは属性に関する任意のアプリケーション情報またはエンタープライズ情報を維持します。
LSGセグメント内の各ノードエレメントと属性エレメントは、プロパティアトムエレメントを複数持つことができ、この関係情報はJTファイルのプロパティテーブルセクション内に保存されます。
個々のプロパティは、キーや値を持つプロパティアトムエレメントペアとして指定されます。キーは値の型と意味を識別します。JTフォーマットでは、多くのプロパティアトムエレメントのキーや値を持つオブジェクト型がサポートされています。対応するのは、基本プロパティアトムエレメント、文字列型プロパティアトムエレメント、整数型プロパティアトムエレメント、データ型プロパティアトムエレメント、遅延ロード型プロパティアトムエレメント、Vector4fプロパティアトムエレメント、などです。
プロパティテーブルには、ノードエレメントと属性エレメントをそれぞれの関連プロパティに接続しているデータが保存されます。プロパティに関連付けられたJTファイル内の各エレメントについてのエレメントプロパティテーブルが含まれます。エレメントプロパティテーブルには、特定のノードエレメントオブジェクトまたは属性エレメントオブジェクトと関連付けられた全てのプロパティについてのキーや値を持つ、プロパティアトムエレメントペアがリストされます。
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